内容説明
「理に合ったもの」だけをすくい上げ、正確な判断を得ようとする、デカルト起源の合理主義。自国の言語・歴史の普遍性に対する信頼から根を広げた普遍主義。両者こそフランス的思考の根幹とされるが、一方には、反合理主義・反普遍主義の脈々たる流れがある。この地下水脈から養分を吸い上げ、豊饒な地平を切り開いたサド、フーリエ、ランボー、ブルトン、バタイユ、バルトらを読み解くことで、フランス的思考の本質に迫る。
目次
序章 合理主義と普遍主義
第1章 倒錯の倫理学―マルキ・ド・サド
第2章 情念の政治学―シャルル・フーリエ
第3章 錯乱の詩学―アルチュール・ランボー
第4章 革命の美学―アンドレ・ブルトン
第5章 欲望の経済学―ジョルジュ・バタイユ
第6章 快楽の教育学―ロラン・バルト
終章 抵抗と例外
著者等紹介
石井洋二郎[イシイヨウジロウ]
1951年(昭和26年)、東京生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。学術博士。著書に『ロートレアモン越境と創造』筑摩書房、2008年(芸術選奨文部科学大臣賞受賞)など。訳書にブルデュー『ディスタンクシオン1・2 社会的判断力批判』、藤原書店、1990年(渋沢・クローデル賞受賞)、『ロートレアモン全集』筑摩書房、2001年(日本翻訳出版文化賞・日仏翻訳文学賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shin
19
30歳台後半に哲学・思想書を乱読してた頃、何故か心惹かれ、時にワクワクし、不安にもなるような根本的な思考のきっかけを与えてくれるキーブックのようなものはフランス人が書いたものが多い気がしていた。本書ではサド、フーリエ、ランボー、ブルトン、バタイユ、バルトを取り上げてフランス的思考の系譜を辿っているが、新書のボリュームに留めるのが勿体ない、とても上質な知の探検をもたらしてくれる。以前感じていたように、不安になるけど希望が湧く、というのがフランス的思考の精髄なのではあるまいか、と個人的には思う。2019/11/04
おおかみ
17
サド、フーリエ、ランボー、ブルトン、バタイユ、バルト。伝統的な合理主義、普遍主義に抗った果敢な6人を、著者は「野生の思考者たち」と呼ぶ。書名からは推測しづらいが、本書が解説する6人はいずれも「フランス的思考」に対するアンチテーゼの立場であり、それは「意味を突き詰めたあげくに無意味に行き当たり、明晰さの果てに狂気を垣間見てしまうこともある(31頁)」。ゆえに本書は「問いかけ」の書物であって、読者が得るのはまさに思考することの愉悦に他ならない。2010/12/31
Gatsby
14
大学の1回生(というのは関西圏だけみたいだが)の時の担任の先生の本。L2(エルツー)つまり文学部2組でフランス語選択のクラス。東大へ移られてご活躍の様子。先生らしく、押しつけがましくなく、品があり丁寧に書かれた本である。序章と終章で書かれているとおり、結局は考え始めと終わりがほぼ同じ地点にいるのだと思うが、そこに戻ってきた自分は、始めの自分とは違った自分としてそこにある。それこそが考えるということだと教えてくれる。ブルトンの章では、ロートレアモンのことが出てくるが、先生のロートレアモンの講義を思い出した。2011/03/13
佐島楓
11
合理主義、普遍主義に抗うような形でさまざまな思考が派生していったのが面白い。明快な文章だったのでどういった「思考」を持っていたのかがわかりやすくてありがたかった。ここから知的世界を広げていけそうだ。2011/11/23
harass
10
デカルトから発した合理主義とそれの反動である特異な思想家を含めて「フランス的思考」と著者は定義する。その思想家作家たちの紹介とエッセンスをまとめてある。サド、ランボー、バタイユ、ブルトン、フーリエ、ロラン・バルトの6人。特に難解ではないがいくらかの思想文学の予備知識があると非常に(知的に)興奮できる。視点や説明が新鮮で楽しめた。各思想家を著者のテーマに沿って少ないスペースでまとめてあるのは見事。思想紹介本のお手本のような新書だと感じた。各人の生涯や作品から、著者の主張に沿った箇所をうまく掬いあげている。2013/06/03