内容説明
混乱を極めた一九九〇年代も今は昔。プーチンという強力なリーダーのもと、原油価格の高騰や国際情勢を追い風に、ロシアは復活した。国際社会と時に摩擦を起こすロシアは「脅威」なのか。その行方を分析するには、指導者たちの決断の背後にある、独特の「ゲームのルール」を見極めることが必要だ。若き現役外交官による冷静な観察は、偏見や怪しげな裏情報を排し、われわれの現代ロシア観を新たにする。
目次
序章 ロシアの見方
第1章 内政―与えられた職務に専念せよ
第2章 外交―多極主義と実利主義
第3章 経済・エネルギー―天然資源による国力増強
第4章 国民生活―「ロシア的」と「西欧的」の両輪
終章 これからのロシア
著者等紹介
武田善憲[タケダヨシノリ]
1973(昭和48)年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程中途退学(法学修士)。2000年外務省入省。2004年モスクワ国立国際関係大学大学院修士課程修了。ジョージタウン大学外交研究所研究員、在ロシア日本国大使館二等書記官などを経て、現在、外務省軍縮不拡散・科学部軍備管理軍縮課課長補佐(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あちゃくん
28
プーチンは、プラグマティックに普通に豊かな国を目指しているという指摘はなるほどと思いつつも、昨今の情勢を見る限りちょっと楽観的かもという感じがします。それだけロシアにとってクリミア半島やウクライナが重要だということなのだろうけど。プーチンは、法律的な手続きを踏んだ独裁で一時の感情に流されていないなという安心感はこの本を読んで得たものの、この体制が長く続いていけばどうなるのかなという懸念も生まれました。プーチンが統治している現在より、プーチン後のほうが心配だな。2014/06/17
Tomoichi
23
プーチンからメドベージェフに大統領が変わった頃に外交官によって書かれた本書であるが、「ゲームのルール」など面白い視点もあるが、プーチンの政権移譲についての分析・見通しについては全く外れていると言っていいだろう。プーチンを甘く見すぎているし、権力と言うものを日本人的甘さで見ている。ウクライナ問題はこの頃には顕在化している。でも何もしなかった西側は今そのツケを払っている。ロシア帝国もソ連も軍事膨張主義であり、約束は破る、既成事実こそが絶対であると思っている国家である。他人の顔色なんて知ったこっちゃない国家。2025/01/12
kawa
16
約10年前のロシアの実像を論じた書。著者も最後の読書案内で「不安」「闇」「強権」といったおどろおどろしいイメージ・バイアスで読まないで欲しいと述べているが、確かに、本書を読むとかつてのソ連と異なる、ロシアの統治の原則(ゲームのルール)が理解でき、かの国が、まともな「強く、影響力のある国」を目指していることが解る入門的書物。おそらく、この原則は今のロシアに当てはまると思うのだが、その延長線上で現在のウクライナやシリアの問題を論じてもらいたい。2016/12/18
アポトキシン
14
図書館本。2010年刊行なので情報が多少古く感じたが、勉強になる一冊だった。原油価格高騰とエリツィンからプーチンへの政権交代が相まって、ロシア国内の生活や国としての立ち位置が変わった。そして、一度どん底を見たロシア国民に再び威信を取り戻させた。この本を読んでいる限りだと、国を生き返らせたプーチンの支持率がロシア国内で高いのはある意味納得である。こちらからしたら戦々恐々だけど。2020/11/22
とうゆ
14
ロシアは、プーチンの独裁状態にある。しかし、プーチンは正式な手続きを逸脱せずに物事を進めている、いわば法治主義的な独裁だ。そのプーチンが作るルールの中で、ロシアは動いている。だから、ロシアを理解するにはそのルールを知らなければならない。この様な主張に基づいてロシアの内政、経済、外交などが紹介されている。ロシアを知る初めの一冊としてはよい本だった。2014/08/26