内容説明
一九八〇年代にいじめが「発見」されて以来、三度にわたる「いじめの波」が日本社会を襲った。なぜ自殺者が出るような悲劇が、繰り返されるのか。いじめをその定義から考察し、国際比較を行うことで、日本の特徴をあぶり出す。たしかに、いじめを根絶することはできない。だが、歯止めのかかる社会を築くことはできるはずだ。「いじめを止められる社会」に変わるため、日本の社会が、教育が、進むべき道を示す。
目次
第1章 いじめの発見
第2章 日本での三つの波
第3章 いじめとは何か
第4章 内からの歯止め、外からの歯止め
第5章 私事化社会と市民性教育
第6章 いじめを止められる社会へ
著者等紹介
森田洋司[モリタヨウジ]
1941(昭和16)年愛知県生まれ。大阪市立大学大学院博士課程修了。文学博士。愛知県立大学助教授、大阪市立大学大学院教授、大阪樟蔭女子大学教授を経て、2006年より2010年まで大阪樟蔭女子大学学長を務める。大阪市立大学名誉教授。専門は社会学(教育社会学、犯罪社会学、社会病理学、生徒指導論)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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テンちゃん
80
いじめは、個人の現象ではなく、社会的な現象が産んだ行動だと思う( ̄□ ̄;)!!一人っ子家族から子どもたちは他人との対応に慣れていない。自分の弱さを隠す為に相手を攻撃することで自らを強くみせようとしていると考える!Σ(×_×;)!それが集団化し暴力、殺人、自殺にまで発展してきたのではないかι(`ロ´)ノ今、必要なことは、弱りきった道徳教育をいかに幼児期から見直し、専門教諭の配置するかだと思う( ̄0 ̄;)今こそ、真剣にいじめについて考える時がきている(◎-◎;)2015/07/04
牧神の午後
9
個人的な体験だけど、転校した小学校で軽くいじめられたことがある。ただ当時はネットでの匿名もなく、陰湿さはいまほどはなかったわけで。技術の進化、社会の変化、何よりも我々の考え方の変化もあって、いじめも変質して、ますます解決が困難になったのだと、もういっそ、人類滅んでも良いんじゃないかな、とまでに絶望してしまう。もちろん、著者は即効薬ではないけど解決策も処方してくれていて、それはある意味共同体主義的な、社会性を取り戻そうとするもの。ただ、そのためには子供だけじゃなくって、親の教育こそ必要なんじゃないカナと。2017/08/04
Riopapa
9
熱い著者の講演を聞いた後だったので,冷静な語り口に驚いた。いじめは個人の問題と考えていた部分があったので,いろいろと考えさせられた。2015/12/30
活字の旅遊人
7
子どもの頃、当然のようにいじめに遭ったし、いじめもやった。それぞれの立場での心境は、それなりに今も覚えていて、ああすればよかった、とかしなければよかったとか、今でも思うところがある。本書でそういうのを、大人の言葉で解釈するというのは、大人が自分を振り返りつつ、子どもにどう向き合うかを考えるのに良いと思うし、大人社会にもあるいじめの種、あるいはそのものを見直すことにもつながると思った。2020/09/29
ヒロユキ
6
日本のいじめ研究の第一人者ともいえる森田洋司氏。氏の提唱したいじめの四層構造論(いじめは被害者・加害者・観衆・傍観者から成る)はあまりにも有名。市民性教育の重要性や私事化社会の功罪、ソーシャル・ボンド等、社会学にまで網羅している。そう、いじめも社会問題。今まで気付かなかった視点もあり大変勉強になった。実を言うと僕自身もいじめ被害者なので、いじめ関連本を読むとフラッシュバックから感情的になりやすいのだけど、この本はそれより少しは冷静に読むことができた。森田氏は残念ながら2019年末に逝去されています。2023/09/02