出版社内容情報
いまなお私たちのこころに響くローマ喜劇。当時の社会・文化をふまえながら、プラウトゥスとテレンティウスの作品の精華を紹介する。
内容説明
古代ローマの喜劇作家、プラウトゥスとテレンティウスの作品は日本ではあまり知られていない。しかし「市井の人々の物語で客を笑わせ、かつ感動させる」という、喜劇作家にとっての永遠の課題はローマ喜劇にその源泉が見出され、演劇史上、極めて重要である。本書は現代との関わりを探りつつ主要作品を解説し、その笑いの技法の数々を見る。さらに、ローマ喜劇の歴史に見られる日本近現代の演劇史との並行性を指摘する。
目次
1 ローマ喜劇とは
2 二つのパリウム劇
3 二人の劇作家―劇場人プラウトゥス、文学者テレンティウス
4 ローマ喜劇とローマ社会
5 プラウトゥスの主要作品
6 テレンティウスの主要作品
7 プロログスという現象
8 ローマ喜劇のその後
著者等紹介
小林標[コバヤシコズエ]
1945年、北海道生まれ。72年、京都大学大学院文学研究科西洋古典語学西洋古典文学専攻博士課程修了。京都産業大学教授、大阪市立大学文学部教授等を歴任。大阪市立大学名誉教授。専攻、ラテン・ロマンス諸語比較文献学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kokada_jnet
1
ローマ喜劇というまったく一般に知られていないジャンルについての解説書としては、異常なほど面白い。テキスト批判/文芸論的な従来の研究に異を唱え、「演劇運動」「大衆芸術」としてのローマ喜劇を分析している故。この本の中でも言及されているけれど、リチャード・レスターの「ローマで起きた奇妙な出来事」って、こういう世界の話だったのね。2010/10/05
脂肪分
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「なあんだ、俺の婚約者を強姦したのは俺自身だったのか、じゃあ結婚しても大丈夫!」っていうオチの「ハッピーエンドのコメディ」が昔あったらしい。2000年前と今とじゃ価値観が違うとはいえ、引くわー…2010/02/12
Saiid al-Halawi
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先行するギリシアのものに比べて情報が少ないだけに面白く読めた。引用されたいくつかの台詞回しも、オペラ・ブッファにならなかったのが惜しいという著者の意見に違わず、にぎやかしく、笑いを誘う内容になっている。著者の強調するように、総合的な舞台芸術であるという演劇の性質上、その「完成された」形を唯一視認する存在たる観客の視座というのは本当に重要なのだと思う。2011/06/02
鵜殿篤
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【要約】演劇とは時代の雰囲気を反映する総合芸術であって、観客の反応を抜きにして語ることはできません。ローマ喜劇とは、外来のギリシア演劇を受容して独自の展開を見せた総合的な芸術運動と把握して初めて理解できるものであって、単にテキストだけを解釈するのでは見失うものが多いでしょう。具体的には、たとえば「プロロゴス」の在り方を見ることによって、ローマ時代の芸術運動の一端を伺うことができます。そしてその時代に寄り添う芸術運動の在り方は、まさに日本の演劇運動を理解する上での参照軸となり得るものです。2018/12/22