中公新書
ハックルベリー・フィンのアメリカ―「自由」はどこにあるか

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  • サイズ 新書判/ページ数 195p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784121020024
  • NDC分類 930.29
  • Cコード C1298

出版社内容情報

「自然」と「文明」の間で揺れ続けるアメリカ。その「原型」ハック・フィンの系譜をたどり、アメリカ人とは、アメリカ文化とは何かを探る

内容説明

ヘミングウェイが語ったように、アメリカ近代文学は、すべてマーク・トウェインに始まる。自然児から文明人になってしまうトム・ソーヤと、あくまで「自由」を求めるハックルベリー・フィン。これこそ「自然」と「文明」の間で揺れ続けるアメリカ社会の根源的かつ矛盾した欲求の原型である。本書はアメリカ文化のなかで姿を変えて生き続けるハック・フィンの系譜をたどり、アメリカ文化とは何かを探るものである。

目次

序 『ハックルベリー・フィン』という一冊の本
第1章 ハックルベリー・フィンの先祖
第2章 国民作家マーク・トウェイン
第3章 『ハックルベリー・フィンの冒険』
第4章 二十世紀のハックルベリー・フィンたち
むすび ハックルベリー・フィンと現代

著者等紹介

亀井俊介[カメイシュンスケ]
1932(昭和7)年、岐阜県生まれ。55年、東京大学文学部英文科卒業、同大学大学院に進み比較文学・比較文化を専攻、文学博士。アメリカ留学後、東京大学教養学部助教授を経て、同大学教授。93年に定年退官後、東京女子大学教授を経て、岐阜女子大学教授、東京大学名誉教授。著書に『近代文学におけるホイットマンの運命』(研究社、1970年。日本学士院賞受賞)、『サーカスが来た!』(東京大学出版会、1976年。日本エッセイストクラブ賞受賞)、『アメリカン・ヒーローの系譜』(研究社、1994年。大佛次郎賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

泉のエクセリオン

12
アメリカ文学の歴史を一度に俯瞰している本。クーパーの1823年の『開拓者たち』に始まり、メルヴィルやソロー、ホイットマンといった作家たちの作品が『ハック・フィン』書かれる前にあり、その中で必ずといっていいほどに出てくるキーワードが「自然と文明の間で揺れているアメリカ」である。特にクーパー、メルヴィルが顕著だろうか。アメリカ文学の作品の中で、主人公たちが社会のレールから脱線して社会からの逃走を試みることが多いのは、自然と文明の間を行ったり来たりするからだ、と一応知りたかった答えは出た2022/07/17

荒野の狼

9
マーク・トウェインの作品である“ハックルベリー・フィンの冒険”を中心にアメリカの文学史を解説した書。人間は自己のあるべき姿を見出しえないでいる宙ぶらりんの(サスペンス)状態で生きている。ハックは自然志向(精神の縛られない自由を求める姿勢)と文明志向(親友のトム・ソーヤーに代表される)との間に揺れながら自分のあるべき生(本当の自分、自己)を追い求めます。つまりハックは、アメリカの人間がどうあるべきかというトウェインが考えた結果の人物像です。2009/08/03

8
アメリカ古典の不動にして普及の名作を、日本における米文学・文化研究の第一人者である亀井俊介教授が読み解いていく。米文学の特徴である「主人公に父親がいない」や「孤児」等のキーワードから推測される通り、アメリカ小説には規範とすべき具体的な人物像というものが存在しない。それは、200年前イギリスから独立するに当り、ヨーロッパの伝統的な「規範」とは全く違う人物像が必要となったからで、その観念とも言うべき思想が、アメリカ文学の主人公(並びにアメリカ国民)の「自由」を生み出している。思ってたよりスタンダードな研究書。2011/02/10

荒川ながれ

5
ヘミングウェイが、「現代アメリカ文学の出発点」だという『ハックルベリー・フィンの冒険』。そこには、「自由」VS「文明」の二律背反のなかでゆれるアメリカ人そのものが描かれている。トムには帰る家がある、ハックはホームレス。本当の「自由」はハックの世界なのかも。この本にインデアン居留地に向かう続編があり、未完成であることを知った。2016/02/23

花実

4
著者は、『ハックルベリー・フィンの冒険』について、ヘミングウェイが、「現代アメリカ文学の出発点」だと言ったことを挙げ、アメリカ文学には、「人間の存在の自由」を求める文学の系譜があるということを解説してみせる。第二章では、職業を転々としたマーク・トウェインの経歴や、東部と西部の価値観の違いなどがわかり、この部分がとても面白かった。トム・ソーヤーとハックルベリー・フィンを産んだ19世紀アメリカにも興味が湧いてくる。2012/07/25

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