内容説明
第二次大戦後の世界は、かつてない急激な変化を経験した。この六〇年を考える際、民主制と市場経済が重要なキーワードとなることは誰もが認めるところであろう。本書では、「市場化」を軸にこの半世紀を概観する。経済の政治化、グローバリゼーションの進行、所得分配の変容、世界的な統治機構の関与、そして「自由」と「平等」の相剋―市場システムがもたらした歴史的変化の本質とは何かを明らかにする。
目次
第1章 あらまし
第2章 復興と冷戦
第3章 混合経済の成長過程
第4章 発展と停滞
第5章 転換
第6章 破綻
むすびにかえて
著者等紹介
猪木武徳[イノキタケノリ]
1945年滋賀県生まれ。京都大学経済学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了。大阪大学教授、国際日本文化研究センター教授等を経て、同センター所長。1987年に『経済思想』(岩波書店)で日経経済図書文化賞、サントリー学芸賞、2002年に『自由と秩序』で読売・吉野作造賞、2004年に『文芸にあらわれた日本の近代』で桑原武夫学芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
49
勉強の参考文献として。わかりやすくはないものの、幅広い情報をカバーしており、参照するには良書だと思う。あまり目配りできていなかった地域の情報も得られた。2016/09/12
くまさん
31
分厚い新書は増えているけれども、その射程と論の包括性においてここまで傑出したものはなかなかないと思う。世界の経済というものがどういうふうに動いてきたか、おおまかにつかむには最良の記述で、公共部門の拡大や所得分配と格差、グローバリゼーションという巨大な問題に対してもクリアな視点を提示してくれている。2019/04/30
James Hayashi
27
新書であるが、戦後の経済状況を網羅している点はかなりもの。アジア、欧米はもちろん、中南米やアフリカ、東欧諸国も記述あり。しかしさすが詳細は他に譲るしかなく全体を把握するのであればこちらで十分であろう。主要な国をピックし解説されているが、地域や世界経済との関わりで説明されているので、難しいが簡明といえるのでは。2020/01/01
Tomoichi
24
20世紀後半の世界経済史なので、昔学校で習ったり新聞で読んだりして覚えている世界なので色々懐かしい内容でした。平成以降に生まれた人が読んだ方がいいですね。2025/01/19
アナクマ
20
(p.28)交換と交易が文明と信頼を生み出すことは確かだが(中略)スミスは市場の拡大や商業の発展は、人々を単純な作業に集中させ、思考範囲と視野を狭くするため、人間を愚かにすると言い切っている。ここに奇妙なパラドックスが存在する。人間は知恵を用い、知識を開発し、情報を収集・散布しながら高度の技術を開発して巨大な富を創造してきた。市場は拡大し、貿易のネットは地球を完全に包んでいる。しかしその過程で、われわれの視野は狭くなり短期化し、お互いの信頼感を弱めるような風土を作り上げた。2017/01/31