中公新書
男が女を盗む話―紫の上は「幸せ」だったのか

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  • サイズ 新書判/ページ数 227p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784121019653
  • NDC分類 913.3
  • Cコード C1295

出版社内容情報

『源氏物語』など平安物語文学は略奪婚=「男が女を盗む話」の系譜でもある。ロマンティックで雅な「平安時代」に別の光を当てる

内容説明

『源氏物語』の主人公光源氏と紫の上は正式な婚姻関係を結んでいない。光源氏による強引な掠奪によって二人の関係は始まり、このことは物語のその後の展開に大きな影をおとしている。平安物語文学は『源氏物語』のみならず、『伊勢物語』『更級日記』などでも掠奪婚=「男が女を盗む話」を繰り返し描いてきた。男はなぜ女を盗むのか、女はそれにどう対処したのか。新たな切り口で千年前の物語が甦る。

目次

第1章 『伊勢物語』の嫁盗み(芥川段はどう描かれたか;芥川段はどう語られたか;背負われる女;男女のコミュニケーション;鬼と女;嫁盗みの失敗)
第2章 『大和物語』の嫁盗み(拒む女;身分違いの恋;女性拉致監禁事件;安積山段を読み直す)
第3章 『源氏物語』の嫁盗み(映画の中の描かれ方;若紫掠奪;紫の上は「幸せ」だったのか;移動させられる女たち;柏木と女三の宮)
第4章 嫁盗みの反転(『更級日記』竹芝寺縁起;笑話としての嫁盗み)

著者等紹介

立石和弘[タテイシカズヒロ]
1968(昭和43)年、東京都生まれ。90年、國學院大学文学部卒業、97年、同大学大学院文学研究科日本文学専攻博士課程後期単位取得退学。現在、青山学院大学、立教大学、恵泉女学園大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

松本直哉

20
母系的な妻問婚の衰退のはじまりを象徴するのが源氏物語の紫の上の挿話だったと言えるだろうか。それ以前も伊勢物語の芥川など、男が女を奪う物語はあっても、女が死ぬなどして失敗していたが、光源氏が初めて掠奪に成功する。しかし紫の上は幸せになったのだろうか。籠の鳥のように閉じ込められて、実家の後ろ盾もなく、子を産むこともなく、夫の浮気を黙って見ているしかない。父権的な結婚を描いたのが紫式部という女性だったのは皮肉だが、それが決して女性を幸せにする制度ではないことを、紫の上の生涯の描写を通じて訴えているように思える。2022/03/14

BECHA☆

6
2008年発行。物語と絵巻物から読者・鑑賞者が受け取られる内容が必ずしも一致していないという指摘は目からウロコ。時々現代の事件に飛んでの読み解きも、古典を教材として扱う難しさに言及されていて、興味深く読んだ。2019/04/07

佐倉唯月

3
非常に興味深く面白かった。◆秩序の外に出たから、死や不幸が待つ、ということか◆秩序から逸脱する、というのは政治(王権)への反逆を含んでいるということか2019/07/01

AR読書記録

3
『源氏物語』を読んで予想外に思うのが、けっこう光源氏のことも、いやだ、きもいと感じる女君(の描写)が多いことで、また男(や社会)の論理の理不尽を指摘する部分も多い。なので、少なくとも色男一代記みたいに読んでしまうのはまったく問題外なわけだけれど、とはいえ切り取り方によってはそのように消費することも十分可能な(そうされてもきている)物語でもある。あくまでファンタジーとして、盗み盗まれに感情を揺すぶられる読者(両性とも)がいてもいいと思うけど、学問上・教育上は両性ともに納得される視点が提示されてほしい。2019/05/11

てくてく

3
古典で取り上げられる男が女を盗む話とはどのようなものであったのか。盗まれた後はどうなったのか、被害者である女側に立った場合、盗まれるとはどういうことなのか、ということを伊勢物語や源氏物語を題材に検討している。副題に「紫の上は幸せだったのか」とあるが、光源氏による連れ去りには乱暴ではなかったものの、一方的であり、また加害者である盗んだ男に生活を依存せざるをえない被害者の女性にとってみれば、そこにはやはり幸せは無かったとみるべきなのだろう。2015/08/01

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