出版社内容情報
六〇〇万人ものユダヤ人が、なぜ、どのように組織的に虐殺されたのか。アウシュヴィッツ絶滅収容所に行き着く過程と、その惨劇を描く。
内容説明
ヒトラー政権下、ナチ・ドイツによって組織的に行われたユダヤ人大量殺戮=ホロコースト。「劣等民族」と規定されたユダヤ人は、第二次世界大戦中に六〇〇万人が虐殺される。だが、ヒトラーもナチ党幹部も、当初から大量殺戮を考えていたわけではなかった。本書は、ナチスのユダヤ人政策が、戦争の進展によって「追放」からアウシュヴィッツ絶滅収容所に代表される巨大な「殺人工場」に行き着く過程と、その惨劇の実態を描く。
目次
序章 反ユダヤ主義の背景―宗教から「人種」へ
第1章 ヒトラー政権と迫害の開始―「追放」の模索
第2章 ポーランド侵攻―追放から隔離へ
第3章 「ゲットー化」政策―集住・隔離の限界
第4章 ソ連侵攻と行動部隊―大量射殺
第5章 「最終解決」の帰結―絶滅収容所への道
第6章 絶滅収容所―ガスによる計画的大量殺戮
終章 ホロコーストと歴史学
著者等紹介
芝健介[シバケンスケ]
1947(昭和22)年、愛媛県生まれ。東京大学法学部政治学科卒業。80年東京大学大学院社会学研究科国際関係論博士課程単位取得退学。82年國學院大學文学部助教授。89年より東京女子大学文理学部史学科助教授、91年より同教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
京都と医療と人権の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
97
「生きるに値しない生命」は排除すべし。為政者がこの信念を持ち、国民が拒否しなかった。それがホロコーストの最初の一歩だった気がする。そこに深く根付いた反ユダヤ主義が結びついて。権利剥奪、幽閉、追放、そして殺戮。家畜の屠殺のように、短時間で効率よく。実行者の精神的負荷に配慮して生まれたガス室!本書はそこに至る道筋を客観的に順序だてて記述する。放り出したくなるのをこらえて追いかける。狂気には違いない。でもそこに一定の筋があることに慄然とする。関係者が粛々とミッションをこなした果ての600万人の死者。何だ、これ。2022/08/20
kinkin
95
版ユダヤ主義とはなにかに始まりヒトラー政権に酔う迫害の開始、ポーランド侵攻、「ゲットー」政策、ソ連運侵攻、絶滅収容所への道、アウシュヴィッツ絶滅収容所についえ、ホロコーストとその跡といった章で構成されとてもわかりやすい。今まではアウシュヴィッツ収容所ぐらいしか知らなかったがこの本ではその他多数の収容所で多くの人命を奪っていて現在は推定焼く600万人が犠牲そのうち100万人が子供だったということも知り心が痛む。終戦後は多くの戦犯が処刑されたもののアイヒマンのように国外へ逃亡した者も多かったという。2023/09/27
skunk_c
74
ホロコーストに関する概説書。10年前からパラ読みしてたものを一気に通読。アウシュヴィッツ=ビルケナウが語られやすい中、初期の銃殺、シンティ=ロマ迫害や障害者・精神病患者の「安楽死」との関係、ゲットーでの飢餓政策、トレブリンカなどの絶滅収容所とワルシャワ・ゲットーなどの関係など、時代を追っていかに絶滅が行われたかをコンパクトに整理している。最終章の歴史学に関する章は、武井彩佳『歴史修正主義』と補完し合っているので併読して良かった。記述のバランスも良く、第2次世界大戦を深く知るための必読書と思う。2022/02/12
syaori
70
ナチのユダヤ人政策の推移を辿る本。当初の「追放」から劣悪な環境のゲットーでの「集住」へ、衰弱したユダヤ人の「殺戮」へという流れが、欧州の反ユダヤ主義の伝統や第一次大戦中ドイツに現れた優生学的思想、第二次大戦の戦況やゲットー・収容所の惨状などを絡めて語られます。印象的なのは、漠然と排除を目指す政策が移送費や土地の不足などの現実に突き当り、その急場を凌ぐように大量殺戮へ進んでいくこと。徹頭徹尾ユダヤ人の滅亡を目指していたイメージのホロコーストの現実を明らかにすることでナチの現実も明らかにする興味深い本でした。2022/06/14
けいご
48
反ユダヤ社会の実現を目指した結果、最終的にホロコーストへと至ったのだけれど、大きく偏った思想の下では人類は育たない事がよくわかった1冊でした。「生きる価値のない人間」と言う確固たる基準のないレッテルを作り上げた人間が「史上最悪な人間」として人類に記憶されるのは何とも皮肉な事ですが、「価値のない人間」って言うセリフは現代も尚至る所で聞くセリフで、あぁもしかすると戦争とは己の心の中、民衆の中で少しずつ育って行くものなのかもしれない、そして誰かを差別する行為は自らを滅ぼす、そう思う1冊でした。2022/07/10