出版社内容情報
アンデス生まれのジャガイモは海を渡り、世界に広まった。ドイツやアイルランド、北海道に小さなイモとヒトの大きなドラマを追う
内容説明
南米生まれのジャガイモは、インカ帝国滅亡のころ、スペインに渡った。その後、フランスやドイツの啓蒙君主たちも普及につとめ、わずか五百年の間に全世界に広がった。赤道直下から北極圏まで、これほど各地で栽培されている食物もない。痩せた土地でも育ち、栄養価の高いジャガイモは「貧者のパン」として歴史の転機で大きな役割を演じた。アイルランドの大飢饉、北海道開拓、ソ連崩壊まで、ジャガイモと人々をめぐるドラマ。
目次
第1章 オホーツク海のジャガイモ
第2章 ティティカカ湖のほとりで―ジャガイモ発祥の地
第3章 ペルー発旧大陸行き―そしてジャガイモは広がった
第4章 地獄を見た島―アイルランド
第5章 絶対王制とジャガイモ
第6章 産業革命と「貧者のパン」
第7章 現代史のなかのジャガイモ、暮らしのなかのジャガイモ
第8章 日本におけるジャガイモ
終章 「お助け芋」、ふたたび?
著者等紹介
伊藤章治[イトウショウジ]
1940年(昭和15年)、旧満州(現・中国東北部)に生まれる。1964年、名古屋大学法学部卒業。中日新聞社(東京新聞)社会部、バンコク支局、文化部勤務などを経て、1998年、編集委員兼論説委員。2001年から桜美林大学教授。専攻・環境史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
80
ちょうどリーマンショック直前ぐらいに出された本。ジャガイモは川北稔的な言い方での「グローバルな作物」ではなく、南米原産のこの作物が、むしろ各地の「最後の自給作物」としての役割を果たしていたことを、多くのケースワークから解き明かしている。ジャーナリスト出身の著者だけあって、現場に足を運んでの記述は極めて興味深く、かつ得るものが多かった。「貧者のパン」というサブタイトルがむしろ本題と言ってもいいほど。男爵イモの由縁とか新発見もあり。ただ、最後の方の食糧問題あたりは、書かれた時代もあろうがややずれている感じ。2022/06/30
Gotoran
54
ジャガイモについて、発祥の地南米チチカカ湖の畔から西欧、そして全世界に広がり現在のように数多くの新しい品種が誕生するまでを丹念に後を追う。その過程で様々な歴史上のトピックス(革命、ロマン、情熱、博愛、献身、挫折など)とジャガイモの関わり(様々なドラマ)についても言及されている。痩せた土地でも育ち栄養価の高いジャガイモは、「貧者のパン」として歴史の転機で大きな役割を演じたと云う。例えば、アイルランド大飢饉、北海道開拓、ソ連崩壊他、ジャガイモを巡るドラマがあった。実に興味深かった。2018/11/05
しゅわ
49
【図書館】齋藤孝先生「社会人が読んでおくべき50冊の必読リスト」より。痩せた土地でも育ち、栄養価も高く、“貧者のパン”として多くの人々を救い、歴史の転機で大きな役割を果たしてきたジャガイモ。そのジャガイモと人類がどんなふうに関わってきたか?をひもとく一冊です。ジャーナリスト出身の著者らしく取材に基づく説得力のある内容。貧困と社会問題の側面から語られ、人々の苦闘がドラマの中心。“歴史”と銘打っているわりにジャガイモの歴史的伝播の経緯と体系的な歴史観ついての記述が乏しいのが少し残念でした。2015/09/30
著者の生き様を学ぶ庵さん
41
足尾銅山鉱毒事件で谷中村を離れた民が、北海道常呂郡佐呂間町字栃木の開拓民として、ジャガイモを植える。もう、冒頭から涙なくして読めない訳ですよ。元はボリビア・ティティカカ湖近辺の高地(富士山より高い)がジャガイモの故郷。スペインのピサロがインカ帝国を絶滅させ、金銀を貪りがてらジャガイモをヨーロッパに伝えたとされる。フランス・ドイツ・ロシア・満州でも痩せた土地で収穫が期待出来る貧者のパンは大活躍。食糧自給率四割以下の日本が勿体ないことをしては罰が当たるとの警告で本書は終わる。筆者は新聞記者出身。2016/11/05
佐島楓
31
「貧者のパン」ジャガイモが、歴史においてどのように人々とかかわってきたかをまとめた本。こういう切り口の本はとても好きです。さまざまな国で、ジャガイモがどのように人類を救ってきたか、また逆に流血の事態を招いてきたか、よくわかりました。個人的には日本の終戦直後とドイツのそれが類似した困窮状態だったという箇所がなんとも悲しかったです。2012/11/12