出版社内容情報
捕虜処遇問題で悪化した英国との関係は好転し、ここにきて中国との関係はなぜ悪化したか。講和の歴史を辿り和解の可能性を探る。
内容説明
第二次世界大戦が終わり六〇年が過ぎ、戦争を直接記憶している人も少なくなった。だがいまだに戦争についての歴史認識をめぐり、近隣諸国との軋轢は絶えない。日本はいつ「戦争」の呪縛から解き放たれるのか―。一九九〇年代後半まで、日本軍による捕虜処遇問題で悪化していた英国との関係はなぜ好転し、ここにきて中国との関係はなぜ悪化したのか。講和の歴史を辿り、日英・日中の関係を比較し、和解の可能性を探る。
目次
序章 「戦後和解」とは何か
第1章 忘却から戦争犯罪裁判へ(神の前での講和;揺らぐ忘却―制裁の登場;勝者が敗者を裁く時代へ)
第2章 日本とドイツの異なる戦後(ドイツの選択;不完全だった東京裁判;曖昧化する日本の戦争責任)
第3章 英国との関係修復(日英関係に刺さった棘;さまざまな和解のかたち)
終章 日中和解の可能性
著者等紹介
小菅信子[コスゲノブコ]
1960(昭和35)年生まれ。上智大学文学部卒業。同大学院文学研究科史学専攻博士課程修了満期退学。ケンブリッジ大学国際研究センター客員研究員を経て、山梨学院大学法学部政治行政学科助教授
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感想・レビュー
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mitei
76
欧米の方は結構和解という状態に近くなってるのを知って驚いた。日中韓の和解はこの本が発刊されて何年も経っているが未だになんの変化もない上更に現状悪化しているなぁと感じた。各国の和解というのは非常に難しいなと思う。2013/02/28
ヘタ
11
日本の戦後和解ケースのなかで、成功しつつあるケース(日英関係)を参考に、より困難なケース(日中関係)に活かせるヒントを探る。結論は、日英間には存在する和解を醸成する要素を日中間では欠いており、現時点での和解は困難とのこと。かなりざっくりしていますが、こんな要旨です。2017/09/16
CTC
5
山梨学院大教授による05年初版の中公新書。戦後和解を図る上で、“成功しつつある”英国との事例から、より困難な中韓との和解の足掛かりを探る。ずばり著者は「正義よりも(高邁な)妥協こそが必要」とし、解決には「可能な限りの偏見の排除、(中略)固定概念の修正」が必要と。しかし本書刊行後の“戦後和解”の10年は、大沼保昭氏が『「歴史認識」とは何か』に「(好きだった)韓国が嫌いに」と記すように、失意のうちにある。著者が結びとする「[過去]を巡って日本と妥協するメリットがない、好機を待つしかない(大意)」という事か。2015/11/11
おらひらお
5
2005年初版。戦後和解の歴史を概観したのち、日英和解について述べた本。日中和解については、終章でとりあげるが、中国には日本を批判しなくてならない事情もあることを再確認。著者は中国が豊かになり、日本を批判することなく国家の統一やその正当性を維持できるようになれば、和解も進むと指摘します。まだ、先が長そうです・・・。2011/11/30
秋津
4
「講和の歴史」について考察する一冊。戦争の残虐化と市民への被害の拡大により、過去は「忘却する」ものから「忘却してはならない」ものへと変化し、また、その中で「加害者/被害者」といった「線引き」、「正義/不正義」といった「バランス」が生まれていったことを指摘しています。少し前まで靖国靖国と騒がしかったので読んでみたのですが、靖国神社参拝問題に対する中国の態度についても考察されており、中々タイムリーで良い感じ。感情的になりやすい問題であるからこそ、「正義より妥協こそが必要」(あとがき)という視点も必要ですねと。2014/01/16