内容説明
いわずとしれた伝奇小説『南総里見八犬伝』の作者滝沢馬琴は、実に具体的かつ詳細な日記を残している。長男の嫁の路も、馬琴のあとをついで同様の日記を書き続けた。下級とはいえ武士であることを意識し続けた馬琴も、隠居後の生活は町人のそれにほぼ近い。家族の結婚、お産、離縁、死別から台所事情、近所づきあい、祝儀のやりとりまで、十九世紀中頃を生きた江戸市井人たちの四季折々を垣間見る。
目次
滝沢馬琴家の家族
家族の結婚、お産、離縁
家族の死別
住居、ペット、風呂
馬琴の財布、路の財布、男の家事
近所づきあい、助けあい
四季の歳事、食べもの
著者等紹介
高牧実[タカマキミノル]
1933年(昭和8年)、飛騨高山に生まれる。56年、東北大学文学部国史学科卒業。71年、岐阜県芸術文化研究顕彰を受賞。75年以降、聖心女子大学文学部の教壇に立つ。現在、同大学名誉教授。日本近世史専攻。文学博士
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
104
滝沢馬琴が残した日記を通して、江戸時代の庶民の生活を紹介する新書。淡々とした記述で、難しい漢字も多いのでやや読みにくい本だった。それでも、本書を通して浮かび上がってくる滝沢馬琴の一家の暮らしぶりに興味を感じる。病気の時に医師だけではなく、祈祷師に頼るのに驚いた。方位なども絶えず気にしている。医学が発達していなかった時代の苦労がしのばれた。馬琴の息子の宗伯は病気がちで、かなり苦しんだことがよく分かる。それを支えた妻路の気丈さ、健気さに心を打たれた。2018/05/17
緋莢
13
図書館本。『南総里見八犬伝』でお馴染みの著者・滝沢馬琴と、その長男の妻・路は詳細な日記を書き続けた。その日記から、住居や近所づきあい、四季の歳時など テーマごとに該当する日記を抜粋し、紹介した本。黒猫を飼っていて10歳をこえて死んだ、また懐妊していた猫が家に入ってきて保護、その後、四匹出産した、子猫が鼠を取った 大事にしていた猫が迷い猫になってしまった等の記述もあったようです。 馬琴の死後、その著作や蔵書を借覧していたようで、その記録も掲載されており とても興味深かったです。2024/07/10
ワッピー
8
馬琴が記録魔だったとは聞いていましたが、ここまで詳細に記録を取っていたとは!日々の生活、親戚・近所の付き合い、信心と祈祷、江戸の経済はこんなに活発に流れていたことに今更ながら驚きです。自分の子孫にも受け継がせていこうという先祖を篤く敬う心、一家を立てるとは、このようにいろいろな情報と物・金をこまめに動かしていくことから成り立っているのですね。馬琴の息子の嫁となり、後に文字を習得して馬琴の助けにもなった路の健気さには涙が出ます。そして、孫の太郎が没したのち、養子に入った小太郎君、一体どうしたのでしょうか?2018/08/01
定年(還暦)の雨巫女。
6
馬琴さんの日々の暮らしの記録がここまで書き遺してあることに驚き。2010/10/14
MIYA
2
馬琴さんは、真面目で厳格な方だったのかもしれませんね。しかし先祖や神々を崇めている様子から、やはり文学者としての矜持を強く持っていたんだろうな。それにしても江戸時代って本当に、近所づきあいが盛んだなぁ。コミュニティの横の繋がりがものすごく強い。しかし馬琴一家、家計や人間関係で苦労してたんですねぇ~。2015/10/17




