内容説明
奈良・平安のいにしえから、日本人は自らの文化の特質について、さまざまな角度から論じてきた。それは、常に異国文化の影響下で自分たちの考え方やふるまい方を築いてきたことと密接な関係がある。本書は、明治以降、西欧文化が激しく流入する時期に焦点を絞り、一五人の思想家、学者、作家などによる代表的な日本文化論を比較文化的視点から読み解くことによって、近代日本人の自画像を検証する試みである。
目次
序 鏡を覗きこむ日本人
1 明治開国と民族意識のめざめ
2 民俗の発見
3 日本哲学の創造
4 文人たちの美学
5 伝統日本への反逆と新しい日本像の発見
6 西欧近代社会モデル対伝統日本心性
著者等紹介
大久保喬樹[オオクボタカキ]
1946年(昭和21年)生まれ。横浜に育つ。東京大学教養学部フランス科卒業。パリ第三大学および高等師範学校に留学。東京大学大学院比較文学修士課程中退。東京工業大学助手、東京女子大学助教授を経て、現在、同大学教授
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感想・レビュー
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たろーたん
6
戦争前は、谷崎潤一郎「闇の美学(ぴかぴかなものより翳りのあるものを好む)」や川端康成「自然との一体化」「日本独自の無」など日本の独自性を評価するものが多いが、戦後は坂口安吾「武士道や天皇制など為政者のための規範は捨て堕落することが人間らしいあり方」や丸山真男「日本の思想はそれぞれが雑然と同居しているに過ぎず相互連関をすることはない。これは敗戦によっても克服されることはなくむしろ激化してる」「天皇を国家原理の中核とする国体の仕組みは曖昧であり、周りがひたすら推し量り、(続)2022/05/21
なお
4
著名な文化論を詳細に紹介された「カタログ」のような一冊。「茶の本」と「陰翳礼讚」は読む予定ですが、個人的に民俗学にはほとんど触れたことがないので本著で書かれている柳田国男や柳宗悦あたりから手をつけてみようと思います。このように「本→本」へと繋げてくれる一冊は貴重ですね。ありがたい。2020/09/25
椿
4
明治から戦後まで日本文化のキーワードが次々出て来て、ものすごいスピードで概観できちゃう。誰でも読めるレベルだし、しかも面白い。川端康成のノーベル賞スピーチとか、岡本太郎がただものじゃないこととか、知ったかさんになれる情報が満載だ。そして、今はどんな時代なんだろうと考えさせる、新しい年号を前に是非。2018/07/18
Ikkoku-Kan Is Forever..!!
3
こういうシンプルな本は頭の整理になるので、日本文化論に関する概観をつかむには良書。特に、志賀重昂の自然観が19世紀のロマン派の自然観に由来するとか、岡倉天心の『茶の本』をフランス象徴主義やイギリスのラファエロ前派との照応でみることで、必ずしも日本文化論が即日本特殊論になるわけではなく、普遍的な事象に関する日本的考察であることがわかる。2017/03/15
左手爆弾
3
1時間くらいでさっと読み通せる。様々な日本論についての筆者の見解は特になく、教科書的に並べていく感じの本。次に読む本を決めるためにはそれなりに有益だと思われる。それにしても、日本という国は、あくまで西洋という漠然とした文化圏を相手取らなければ自分自身の文化を語れないのであろうか。あるいは、日本の文化の独自性を語りつつも、結局洋服を着て洋風の社会制度の下で生活しなくてはならないのだろうか。2015/01/27
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