内容説明
月明かりを頼りに縄ばしごで部屋を抜け出し、四頭立ての馬車で追手を振り切って国境を越える―そんな駆け落ち結婚が女性の憧れの的となった。舞台は十八世紀イギリス。家同士の結婚ではなく、恋愛の結果として結婚したい。それを最高の形で証し立てるのが周囲の反対を押しのけての駆け落ちだ。社会現象となって当時から文豪がこぞって取り上げ、信奉者は今も跡を絶たない。淑女たちの過剰な憧れが生んだ悲喜劇の顛末は。
目次
第1章 恋愛結婚と駆け落ち婚
第2章 婚姻法の変遷とスコットランド「駆け落ち婚」
第3章 グレトナ・グリーン婚
第4章 華麗なる駆け落ちカップル―結婚狂騒曲の古典
第5章 「駆け落ち婚」から見た一九世紀イギリス文学史
第6章 ロマンス小説とグレトナ・グリーン婚
第7章 現代イギリス式結婚狂騒曲
著者等紹介
岩田託子[イワタヨリコ]
1958年(昭和33年)、大阪府に生まれる。英国ケント大学大学院M.A.、津田塾大学大学院文学研究科博士後期課程修了。現在、中京大学教授
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感想・レビュー
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たまきら
22
ロマンス小説を読んで初めて知った(高慢と偏見すら読んだのはごく最近の自分)「グレトナ・グリーン=駆け落ち婚」。最近読んだばかりのロマンスでも、未亡人とはいえ義妹を愛人にしようと企む義兄に法的に対抗するため、急いで結婚するカップルの話を読んだばかり。女性の「あなたは私のためにどこまでしてくれる?」と、男性の打算には笑った。この本では史実として残っている駆け落ちエピソードも紹介されているのも面白い。もう不要なはずの「駆け落ち」が今も人気なのは、恋の不変の要素だからなんだろうな。2018/07/10
viola
8
駆け落ちにとても興味があるので読んでみました。駆け落ちやグレトナ・グリーンと言ったらやっぱりまずオースティンと、ディケンズよねーと思っていたら、想像通り載っていましたよ。やはり、文学よりも実際に起こった駆け落ち事件が面白い♪何故か3回も挙式をしたコックリン夫妻なんて、最初は駆け落ち婚だったらしく、国教会挙式後に生まれた三男が長男・次男は庶子である!と訴えたらしいですよ。 で、何で3回も挙式を?というのが謎ですが。202ページと新書の中でも薄めなのに、岩田氏だけあってよくまとまっている良書だと思います。2011/02/01
aiko
4
英国が舞台の歴史作品に頻出するスコットランドの村グレトナ・グリーンでの駆け落ち結婚。 これについて制度の成り立ちから現在までの様子、文学・演劇等における駆け落ち婚の言及までこれでもかと詰め込んであり面白かった。歴史ものの解像度が上がりますね。6章で例に出されるハーレクイン・ロマンス『グレトナの花嫁(The Gretna Bride:1985)』がトマス・コクランをモデルにした海軍士官と若き乙女の駆け落ち&冒険活劇とあり大変読みたい2024/12/04
ロピケ
3
りディアが何でわざわざ行き先を手紙に書いておいたのか、その地名にどんな意味があったのかが今になって分かった。その場面を読んだときは、「?」が頭に点灯しつつも、新婚旅行か何かのつもりだろうと深く考えなかったに違いない。それにしても、恋愛結婚の価値を高めるためとはいえ、駆け落ち婚の必要性の感じられない現代に至っても、その場所で式を挙げることが意味を持ち続けているってすごいなあ。研究書で小難しいかな、と思ったけれど、案外軽く読めた。2013/02/27
noémi
3
人は人生をロマンティックなものであってほしいと思うらしい。だから、簡単に恋は成就せずに波乱万丈の末に結ばれたい。グレトナ・グリーンは英国における恋人たちの「駆け込み寺」だった。しかし、この本を読んでいるうちにかの有名なジョゼフィーヌとナポレオンの離婚の理由を思い出した。カトリックであった彼らが離婚できたのは、教会で挙式せず、「法的な結婚」だけをしたからだ。英国国教会は離婚を認めている。さすれば、結婚後も臆面もなく不倫を繰り返すフランス人より、面倒でも離婚をする英国人のほうがまだ誠実ということなのか。(苦笑2011/02/07