中公新書<br> 蘇る中世の英雄たち―「武威の来歴」を問う

中公新書
蘇る中世の英雄たち―「武威の来歴」を問う

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  • サイズ 新書判/ページ数 212p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784121014443
  • NDC分類 210.4
  • Cコード C1221

内容説明

架空の伝説的世界には史実を超えた堅固な観念の実在性がある。時代とともにいかなる過程を経て、源為朝や義経、古くは菅原道真や平将門、源頼光といった、歴史上、敗者とされる武人が、なぜ英雄に変貌したのか。中世を原点とした伝説が肥大化する過程で、近世あるいは近代の歴史の枠組みに与えた影響とは。これを「武威の来歴」という枠組みで捉えると、そこには民衆の記憶によって蘇り復活して、歴史に復讐する英雄の姿があった。庶民の夢に託された伝説の記憶をひもとき中世の様相を語る。

目次

1章 再生する英雄たち―江戸のなかの中世
2章 道真と将門―敗者の復活
3章 田村麻呂と頼光―武威の来歴
4章 為朝と義経―異域の射程
5章 伝説の記憶―歴史観の祖型

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

二笑亭

6
中世の英雄たちが江戸期に再生したメカニズムへの考察。寺子屋の教材“往来物”が歌舞伎や能を受容する際の基礎知識となったのは、現在のNHK大河ドラマが歴史の授業等を通して日本人に馴染み深い戦国時代を扱った作品が多いのに通じるかも知れない。将門伝説からは坂東武者のアイデンティティ、坂上田村麻呂と源頼光からは「武威の来歴」を源頼朝と鎌倉武士が援用したように、伝説の発展には多分にイデオロギーやプロパガンダを含むよう。その最たる例が、日本人の領土意識の拡大に比例して発展していく義経の入夷伝説か。2022/11/30

壱萬参仟縁

4
源平合戦物では、義仲の誕生や齊藤実盛に焦点を据えた『源平布引滝』(寛延2年 14ページ)。小谷部全一郎『成吉思汗ハ源義経也』(大正13年)では、「亜細亜は亜細亜人の亜細亜なり」とあり、アジア至上主義が垣間見れるという(164-5ページ)。大東亜共栄圏とつながっていることに愕然とさせられる。国民を騙して戦争に駆り立てたので。東アジア共同体とは程遠いのか。2013/02/22

迦陵頻之急

2
中世の英雄の史実がどんな時代相の影響下で虚構化、伝説化、文芸化されてゆき、逆にその伝説がいかに歴史に影響していったか。道真の怨霊化、神格化は王権の衰退と表裏にあり、将門の武威は関東政権の種を蒔く。史実的には目立たぬ存在だった頼光が伝説において巨大化するのは、都の守護者、公家の護衛者の血脈のブランド化であった。そして武威の将門と守護者頼光を統合する頼朝政権。一方で、敗者たる為朝、義経は伝説において異郷で生き延び、日本国の異郷観が拡大するにつれその足跡は外に延び続け、遂には琉球、大陸に及び、伝説は政治化する。2024/04/17

富士の鷹

0
歴史の教科書には顔を出さない中世の英雄たちが、能、歌舞伎の世界でいまだに接することができるのはスバラシイ2012/11/30

kino

0
面白い考察。3章田村麻呂と頼光がことに興味深かった。ありえたかもしれない頼朝とは別の源氏の系統。2012/11/04

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