内容説明
アジアとヨーロッパとを隔てるボスポラス海峡の両岸にまたがる国際都市イスタンブール。ここにさまざまな目的で滞在した日本人を含む一二人の人物の行動と記録を通して、オスマン帝国の崩壊からトルコ共和国の誕生まで一世紀にわたる激動のトルコの内外情勢をエピソード豊かに紹介する。同時に、歴史の宝庫としての古都の魅力や、同じアジアの一員としてかつて列強に対抗した日本とトルコの不思議な親近感をも伝えてくれる。
目次
第1章 ナイチンゲール
第2章 シュリーマン
第3章 ピエル・ロティ
第4章 山田寅次郎
第5章 乃木希典
第6章 大谷光瑞
第7章 芦田均
第8章 橋本欣五郎
第9章 トロッキー
第10章 アガサ・クリスティー
第11章 ブルノ・タウト
第12章 キケロ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
33
オスマン滅亡から新生トルコ誕生の第二次世界大戦終了まで縁の人々を取り上げ近代トルコのあゆみを活写。大戦時、連合国と枢軸国双方の強力プレッシャーをかわして大戦終結直前まで中立政策を堅持したトルコの外交巧者ぶりや、当時のイスタンブールでのスパイの暗闘の模様を、キケロを通じて描く最終章がエキサイティング。ナイチンゲールはクリミアではなくトルコで活動。日本の軍国化の引き金になった3月事件、10月事件の首謀者・橋本欣五郎はトルコ駐在武官でトルコ近代化のトップ・リーダー・ケマル・パシャに心酔、興味深い歴史ネタ多数。2024/06/28
ntahima
23
【市図書29】東西を繋ぐ歴史の古都を通り過ぎて行った人々を絵札に描き一枚一枚捲って見せた小品。実はこういう形式はけっこう好みである。但、それは日本を含む東洋史、もしくは西洋史に限ってのこと。トルコやその周辺国に関しては基礎知識が著しく不足しており、ここで語られるエピソードの歴史上での位置づけが分からず、聊か消化不良の感否めず。通史を読まねば!それはそうと、国を追われた者や、異教の旅人にも寛大な遊牧の末裔トルコが、なぜ国内少数民族にはあそこまで不寛容なのだろうか?トルコは好きだけに、そこがひっかかりまくる。2016/01/23
wei xian tiang
3
沖縄時間、博多時間というのは今もあるが、乃木将軍のトルコ滞在の印象で「土国ニテハ時間ノ観念ニ乏シキコト我大阪ニ類セリ」と書いているからには、明治の大阪人は時間にルーズで有名だったらしい。2015/11/24
みなみ
2
イスタンブールに関係した人物を集めるだけでなく、近現代のトルコ史を紐解くものである。第二次世界大戦におけるトルコの外交政策がすごい。国内を戦場にしないための外交努力。しかし国内的にはとんでもない増税だったようだ。オリエント急行やトロイの遺跡など有名どころから、「この人トルコに行ってたのか」と驚く人物も。2019/11/12
Yasuhisa Ogura
1
ナイチンゲール、シュリーマン、乃木希典、芦田均、アガサ・クリスティー、トロツキーなどイスタンブールにゆかりのある人々を通して、この都市を描き出したもの。アジアとヨーロッパ、キリスト教とイスラム教、そしてオスマン帝国とトルコ共和国を「つなぐ」イスタンブールは、強烈な個性を放つ国際都市であり、これらの人々に大きな影響を与えている。本書を読めば、イスタンブールを訪れてみたいという衝動に駆られてしまうだろう。2019/01/14
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