内容説明
日本が近代国家として出発したとき、行政を主導する立場にある法科系事務官に対し、技官・技師は脇役的な立場に置かれていた。そこで彼らは大正デモクラシー下に技術者運動を起こし、地位向上のための政治的動きを開始した。しかし彼らの国政への参画という夢が実現したのは、日中戦争下においてであった。戦後の科学技術行政は、戦前の残照と米国の指導下に再スタートするが、本書はそこに至る戦前技術官僚の思想と行動を追う。
目次
第1章 お雇い外国人に代わる日本人技術官僚の登場
第2章 第一次大戦後の工業国化と技術者たちの目覚め
第3章 大正デモクラシー下における技術者運動の横へのひろがり
第4章 新国土経営計画展開の中でのテクノクラシー思想
第5章 大陸経営へ向けての技術者動員
第6章 技術官僚が政治的飛躍を遂げた科学技術新体制
第7章 戦後日本における科学技術行政の再建
結語 科学技術の独創性・創造性のこと
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
月をみるもの
4
なんで河川局があんなに権力があるのか、なぜ技官が次官になれるのは国交省(の旧建設省分)と文科省(の旧科技庁分)だけなのか、などなど長年の疑問が歴史を紐解くことで氷解した。技術官僚が明治のお雇い外国人の代替という位置付けでしなかったことが、すべての源にあるのだなあ。。戦後分の続きを誰か書いてくれないだろうか。。2017/04/17
ほーりー
1
明治初期のお雇い外国人から、政策の意思決定には関われないという立場も一緒に受け継いだ技術官僚は、創生期の国家の官僚としてはやくも官僚本来の阻害状態に陥った。例えば、利水→治水→工業利用と変遷した水利政策を実行に移す立場ではあったが、その方針を決めることはできなかった。一方で技術者本来の自由を求めた彼らが最初に本領を発揮できた場は満州国であった。本土にはない1318kmの河川の扱いなど技術主導の政策決定の可能性は確かにあったようにも思えるが、合理的にその実現を否定する立場はありえなかったのだろうか。2011/12/22