内容説明
六七一年十月、天智天皇の弟大海人皇子(天武天皇)は王位継承を断わり吉野に隠棲。翌月、天智の子大友皇子は大海人を討つべく五人の重臣と盟約を結んだ。天智後継の座をめぐる壬申の乱の発端である。天智は大友かわいさで大海人を疎外したのか。大友は絶えず後手にまわり敗れ去ったのか。王位継承をめぐる対立はなぜ大規模な戦争に発展したのか。通説を再検討し、古代最大といわれる攻防のドラマを再現、その歴史的意義に迫る。
目次
1 近江大津宮、その日
2 大海人皇子をめぐる群像
3 内乱の発生と展開
4 内乱の拡大と終焉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
125
作者の推論も含めて語られる。最後の戦いが、今の滋賀の瀬田であり、水戸の光圀は、負けた側の大友皇子の最期の地はこのあたりだとし、彼が大友皇子の名誉回復ともいえる事をした。作者は、山崎の戦いは滋賀ではなく、大山崎🟰明智光秀と羽柴秀吉が戦った場所と唱えている。天皇と自ら名乗ったのは、勝った側の大海人皇子が最初であり、彼は一代限りのつもりで使ったのではないかと、2022/06/26
Willie the Wildcat
69
皇位継承を巡る禍根。片や出家、片や王道。天智天皇の崩御で、後継者問題に点火。初動の判断の誤りの根底にある”縁”を含めた結束力の欠落、倭古京喪失による戦略の迷走、高安城を占拠後の次の一手の戦術の落ち度、以上3点が王道破綻の主原因。歴史的に興味深いのが『異形の王』。意図的か偶然か、(結果的にも)前者であれば大海人皇子の先見性が光る。『庚午年籍』の齎したアイロニーも印象的。仏作って魂入れず、という感。因みに、大海人皇子の”合言葉”の解説に垣間見る著者の歴史への思い入れ。しっかり”熱”を感じさせて頂きました。2021/12/22
スター
53
馴染みのない時代なので、読むのに苦労しました(^◇^;) 天皇とは、道教の世界観で最高の神格をあらわす称号で、具体的には北極星を指すのは初めて知りました。 唐の高宗が一時期採用したのも初めて知りました。2020/01/26
Koichiro Minematsu
41
天武・大友の王位継承上の対立が、なぜこのような大規模な戦争に発展したのかという問いに明確に答えている。律令国家に向かおうとするその前で人間関係の妙がなすものだ。史実をどうみるかということを学んだ。2019/08/03
bluemint
26
古代最大と言われる内乱だ。従来より皇族による大王の座を巡る争いは、女帝から譲位を引き出すために行われることが多い。違っているのは2年前に実施された戸籍調査の庚午年籍に基づき両陣営が徴兵をおこなったからだ。また、大海人皇子が表舞台から一歩引いたことで、大友皇子との争いから超越した立場に自分を置いたため、従来の大王とは次元の異なる王となり、呼び名も「天皇」とした。兵の進め方などよく分析してあるが、人の名前と関係が複雑すぎた。2022/04/18