内容説明
近代化に必要な施設として、あるいは経済活動の象徴としてつくられた日本の美術館は、王侯貴族・富豪の私的コレクションから出発した欧米の美術館とどう違うのか。美術館の歴史的位置付けと社会的役割の変化を辿りつつ、革命によって美術品を市民の手に勝ち取ったフランス、建国当初から美術品を公共財としてきたアメリカなどを軸に、日本の美術館の特質を問う。民主主義の発生と公共の美術館という概念の誕生をめぐる野心的考察。
目次
第1章 啓蒙思想以前のミュージアム
第2章 ミュージアムがミュージアムになった時代
第3章 ミュージアムと特別展の歴史
第4章 現代ヨーロッパとミュージアム
第5章 日本の美術館
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zoe
24
1995年。美術品、舶来品、知識、教育などはかつて限られた権力者だけが手にするものだった。例えばルーブルは自由・平等・博愛の裏付けあっての公共施設として美術館が成立した。アメリカでは事業の成功者が建物を含め寄贈し、建物に自分の名前を入れないようにする。当時の日本の問題点も指摘しつつ、つまるところ、ミュージアムは、皆が遊べる場所としてあって欲しいということがよくわかる。2020/11/23
aisu
8
欧米と日本の美術館の誕生と歴史。美術作品を一般公開する根拠…。私的には、日本には日本の良さがあると思うので、思考錯誤しながらでも日本っぽい発展するのでは…2014/11/29
なをみん
1
主に欧米の有名美術館の成立と歴史について基本的なことが学べた。レストランに厳しいイタリアの美術館の話も新鮮。「美術品の購入価格は全て公表して(日本の)美術館館長に厳しい説明責任と社会的地位を」って主張はさすがに大変だろうけれど頷きたい気持ちもあるけれど1995年の本だけど「美術館は民主主義の産婆役」って言葉は今の日本でももっと向き合うべきだよなあとも思うけど。2024/06/01
Y / N
1
美術館の成り立ちの歴史がよく分かる。読むと,日本に私立美術館が少ないことと,都現美のような「税金でこんな美術館建てるな」論争がたしかに日本独特のものだなぁということが納得できる。ただ95年出版のせいか,キュレーションなどにまつわる現代的な問題は扱っていない。2014/04/01
寝落ち6段
1
博物館や美術館は好きだ。結構いろんなところを見てきたけども、面白くないところと面白いところの差は歴然としている。面白くないところの特徴は、雑然としているところである。本書にあるように欧米の諸館は民主主義により、市民の側からの必要性によって成立している。日本の場合は、官庁主体で成立している。ただ作っているだけなのだ。文化に親しむことができる土壌を博物館はしなくてはならないのに、本末転倒である。その点、私立博物館は結構面白い。2013/04/07