出版社内容情報
高い学歴を求める風潮と、それを可能にした豊かさに支えられ、戦後日本の教育は飛躍的な拡大をとげた。一方で、受験競争や学歴信仰への批判も根強くあるが、成績による序列化を忌避し、それこそが教育をゆがめる元凶だとして嫌う心情は、他国においてはユニークであるとみなされている。本書は、このような日本の教育の捉え方が生まれた経緯を探り、欧米との比較もまじえ、教育が社会の形成にどのような影響を与えたかを分析する。
内容説明
本書は、欧米との比較もまじえ、教育が社会の形成にどのような影響を与えたかを分析する。
目次
第1章 大衆教育社会のどこが問題か
第2章 消えた階層問題
第3章 「階層と教育」問題の底流
第4章 大衆教育社会と学歴主義
第5章 「能力主義的差別教育」のパラドクス
終章 大衆教育社会のゆらぎ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう。
31
日本の教育は建前上は全国民に保障され、義務教育は実際に多くの子どもたちが受けている。国民に広く教育が開ているともいえる。しかし、学歴と階層との関係、地域との関係など、平等とは何かを問いながら、今日の教育を問うと、大衆教育社会とは何なのか、考えながら読んだ。形式上は大衆に広く教育が行き渡っているかもしれない。しかし、権利としての教育はどうなのか。難しい。2020/07/16
さきん
24
ちょっと内容は古くなってきている。経済格差がまだ顕著ではない80年代。日本の場合は上流階級が富裕層とイコールではない。しかし、この時代でも、教育にお金をかけられる富裕層が高学歴の切符を得やすくなっている。機会の平等を謳い、小中、そして高校までの体制は完備されている。現在はというと、高学歴だからといって良い職は約束されないし、大学院もまた然り。だからといって、今の社会に対応した教育制度を確立することは難しい。IT人材の中でも格差が大きい。2021/09/10
佐藤一臣
19
教育の機会均等により、個人の能力が問われるようになったが、その個人の能力は家庭の文化によりすでに決まっていると言う。例えば、小さいときから家に本が沢山あり、両親が読書好きなら、その子どもは環境に左右されて読書好きになるだろう。そうした文化の継続性が個人の能力を規定しているというわけだ。本来のエリートは、卓越した能力、奉仕精神、指導者としての自覚が条件だそうだが、日本の場合は単なる学歴エリート(卓越した能力のみ)が多いようだ。日本の学校の教育内容の「中立性」と「差別感覚」の定義にはびっくりした。2017/11/29
小鈴
16
発行から20年経ち教育社会学の古典的名著の感がある。出自に関係なく学歴があれば社会的地位を確保できると皆に共有され、皆が競争に参加する。他国と異なり階層文化から「中立的」に見えるテストで序列をつけるからこそ「公平」だと皆が思う。これを大衆教育社会という。教育による序列化で生じる主観的差別感を「不平等」と配慮する。努力さえすれば高い学歴を得られる平等な教育システムだと私達は考える。しかし、実態は父親の学歴差によって進学率が異なるのだ。構造的に生じる教育の不平等に目を向けることはない。ザ社会学的結論なのだ!2017/03/27
ネムル
14
戦後教育における学歴主義と平等主義の定着と、その歪みを書いた好著。教育格差を生み出す大本の文化・階層の問題に目をつむり、能力のある者なら平等に成り上がる太閤神話がある一方で、学力に劣る者への差別意識から能力主義に反対するという、なんとも滑稽な構図。20年以上前の著作だが、その後のゆとりに至る経緯も察せられるようですこぶる興味深い。また今の教育の場における、妙に過保護な対応もこうした反・差別意識としてのものなのだろうな。根が深い。2018/05/18
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