内容説明
在野のエコノミストとして、また悲劇の宰相として名高い石橋湛山の原点と真骨頂は言論人としての存在にある。即ち1910年以降の政府・軍部にみられる武断政治、対外膨張政策に真向から対峙して「小日本主義」を掲げ、ラディカルな大正デモクラシーの論客として軍国主義批判を貫いた。新資料を踏まえて言論人湛山の思想を検討するとともに、戦後、日中貿易再開、脱冷戦の思想を説いた政治家の顔を照射して巨人の全貌を明示する。
目次
第1章 幼年・少年・青年期
第2章 リベラリズムの高揚―1910年代
第3章 中国革命の躍動―1920年代
第4章 暗黒の時代―1930年代・40年代前半
第5章 日本再建の方途―1940年代後半
第6章 政権の中枢へ―1950年代
第7章 世界平和の実現を目指して―1960年代
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
108
石橋湛山の評論などはいくつか読んだことがあるのですが、本当に昔から揺らぎのない一本芯の通った考え方で生涯を貫いたという感じがします。小日本主義ということで植民地を持たないという考え方は、当時として主張するのは大変であったと思います。また晩年の時には政権を任せられるものの、病に倒れてしまって全うできなかったということはその後の日本にはどうだったのか。湛山については本当によく知っている人が書いただけあって伝記としては最高水準のものだと思います。2016/01/24
ステビア
30
こんな筋金入りの合理主義者・個人主義者・自由主義者・プラグマティストが日本にいたなんて。2023/10/27
Tomoichi
23
日本の保守主義について語られる時に常に代表的な人物として名前が出てくるが、彼の小日本主義やその短い首相在任期間しか知らなかった。今回本書でその生涯と主義主張を知る事が出来たのは収穫でした。ただ、やはり彼は政治家ではなくジャーナリストだったのでしょう。病気を理由に首相を退任した事は美談ではないと思う。結局首相として結果を出していないのだから。2025/05/11
masabi
9
【概要】戦前はジャーナリストとして、戦後は政治家として活躍した石橋湛山の評伝。【感想】自由主義、小日本主義、国際協調が行動指針であり、時期を問わず一貫している。戦後政界に進出した後も自身の信念に従い実践したあたり凄みを感じた。対峙する相手がGHQ、吉田茂、岸信介と大物にも退かず、遂に総理大臣にまで登り詰めるが大病により勇退する。早期に日米中ソ平和同盟を構想するなど独自の視点を持ち、その実現に奔走する。冷戦に囚われない異色の政治家だった。 2021/07/25
こけこ
5
古い本だが、石橋湛山の経歴や思想がわかりやすくまとまっていて、著者の増田弘史が分析や解説、評論をしている。真のリベラリストや先見の明があるとはこういう人のことを指して言うのかと少しわかった。2024/05/02