内容説明
中世いらいインド歴代王朝の首都であり、権力の盛衰・興亡の一大拠点であったデリー。「七つの都市デリー」「十五の町デリー」と言われてきたように、そこには各時代における城砦都市や首都の地域的な移動といった事実のほか、民族と宗教の問題、植民地支配時代の「東洋と西洋」の問題をはじめ、多重・多層的な複雑な性格が見られる。本書はデリーが発展し、停滞し、再興されて行く歴史の中に多重都市の特徴と由縁を見る。
目次
第1部 回想の中のデリー(初めてのデリー;パタウディー・ハウス;王たちが残したもの;オールドデリー;メヘローリーの憂鬱;コンノート・プレィス)
第2部 歴史の中のデリー(トルコ系ムスリムの侵入;ムスリム支配の展開;サルタナット後期の情勢;ムガル最盛期のデリー;ムガル帝国の衰退;デリーのイギリス人;共和国首都へ;民族、宗教と国家)
終章 変容する国都
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mittsko
5
20年ぶりぐらいかな、再読させていただいた 今回は、デリー滞在中、移動中に少しずつ読み通した デリーを訪れる日本人読書家は、ぜひ一読をおすすめしたい この都市の歴史的な積層の様子が、印度中世史家(とくにイスラーム建築史)でデリーと縁ぶかい著者の数々の思い出とともに、書き連ねられている 本書出版からすでに30年余り、その後の今も、急速に大胆に変動する印度の首都が、さらに厚みをもってせまってくる ※ なお、現代史のところで、少しばかり事実誤認があるので要注意2025/03/09
in medio tutissimus ibis.
2
デリーは、東にドーアーブ地方、西にタール砂漠とガンジス川流域、南は中央南インドへ通じ、北にはパンジャーブの穀倉地帯を望む交通と経済の要衝であり、ヤムナー川と2つの丘陵地帯に挟まれた二等辺三角形は防衛にも有利な地形だが、水利の確保が困難だったために開発されたのは中世は14世紀以降になる。以後七百年、多数のイスラム諸王権と、インド帝国そして共和国の主都であった。本書はその長い歴史と、著者の目撃した近代の急激な変化をそれぞれ描く事で、インドにおける政治権力の変遷や、それに伴う宗教や民族の浮沈を明らかにいていく。2021/09/17




