内容説明
一六二四年、大航海時代のオランダ支配に始まり、今日までの四百年に近い台湾の歴史は、「外来政権」による抑圧と住民の抵抗の記録である。外来政権はオランダ(スペイン)、鄭氏政権、清国、日本そして国民党政権である。では近年の目覚ましい経済発展の要因はどこにあったか。また急速な民主化の進捗は、対中国との関係で台湾をどのように変貌させるだろうか。一九九三年の「シンガポール会談」も踏まえ、歴史を描き、将来を展望する。
目次
序章 大航海時代の波しぶき
第1章 オランダ支配下の台湾
第2章 鄭氏政権下の台湾
第3章 清国の台湾領有と初期の経営
第4章 台湾民主国
第5章 日本統治の基礎づくり
第6章 日本植民地下の近代化
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
109
台湾の通史。時系列で丁寧に語られ、歴史の流れを掴みやすかった。今の台湾社会の背景を少しばかり深く知ることが出来たと思う。17世紀以降、台湾はオランダや清、日本、中華民国など外来政権による統治の歴史が長く続く。外部の事情で社会の仕組みが変わり、原住民、移住民たちにとって翻弄された歴史でもあった。特に1947年の二・二八事件は衝撃的。その後の40年にわたる戒厳令には驚いた。それらを経て台湾としての社会が形成されてきているようだ。本書は民主化が始まった90年代初頭まで。その後の歴史も別の本で読もうと思う。2020/05/26
ゆかーん
48
『流』という小説を読んで、台湾という国をもっとよく知りたくなったので手に取りました。台湾の過去を知れば知るほど複雑で、現在に台湾という国が存在していることが不思議に感じられるほど、悲惨な過去を持っている国でした。オランダ、フランス、中国、日本などに次々に攻められ、北へ南へ追いやられていった民族たち。そして戦後、日本から中国へ返還された台湾は、『国民党政権』の戒厳令により苦しめられました。中国による統治に抵抗しようとする台湾は、これから先『統一』という形で和解できるのでしょうか?時間のかかる問題ですね…。2016/02/25
James Hayashi
22
メモ:母が日本人である鄭成功はオランダの支配を打ち破り、国民から英雄と崇められている。 ペリーは日米和親条約を締結後、台湾を訪問。貴重な報告を国に上げた。その後欧米列強に開放された。1895年日清戦争後、日本へ明け渡される。後藤新平総督の飴とムチにより多くの現地民が(ゲリラ戦などで)犠牲になったが、台湾の近代化の基礎が出来上がる。これを読むと小林よしのり氏の「台湾論」は一面的であり極右的と感じる。太平洋戦争では20万人以上狩り出され、戦病死者は7人に一人。戦後は法事国家が無法国家と化した。注目すべき国。2016/02/05
スー
20
外来政権に支配された台湾の苦難の歴史。日本の植民地政策は欧州に比べて良心的で独立後、先進国になった国は日本の植民地ぐらいだと度々見ましたが、欧州を手本にして政策を行っているので結構酷かった事が分かりました。日本はかなりインフラを整備したが筆者は生産力を上げる為だったと指摘しています。少し誇れるのは医療と教育に力を入れた事です。1944年当時の児童の就学率が92%を超えていたし台湾出身の医師が日本で働いていたそうです。教育と寿命が延びた事がその後の発展に繋がったと思います。戦後の国民党の統治そして228事件2018/09/17
coolflat
17
台湾はオランダ、鄭氏政権、清国、日本、そして国民党政権という、いずれも「外来政権」に支配されてきた。台湾の歴史とは、いわば「外来政権」による抑圧と住民の抵抗の歴史である。17頁。オランダにとり台湾は、単なる貿易の中継拠点ではなく、植民地・領土そのものであった。オランダは先住民や移住民に鹿の捕獲を奨励すると共に、捕獲器具に税金を課して収入を得、更に貿易により利益を上げた。正に濡れ手で粟式の収奪であり、全てがオランダによる乱獲の結果とはいえないまでも、台湾の鹿がほとんど絶滅状態となった大きな原因はここにもある2016/11/14