内容説明
歿後200年を経た今、モーツァルトの功績を無視する者はいないが、世の天才の常として、その評価は、生存中から死後まで一定したものではなかった。しかし、価値観の変化に伴う毀誉褒貶はさて置き、彼は、音楽史の上にどれほどの貢献を行なったのか、また行なわなかったのか。本書は、政治状況、流通事情、人的関係、作曲のプロセスなどの多角的資料を整理して、モーツァルト像のエッセンスを新たに抽出しようとするものである。
目次
モーツァルトの生涯
モーツァルトの音楽の背景とヴァイオリン協奏曲
ザルツブルクのディヴェルティメントとセレナード
ザルツブルク時代の教会音楽と「ハ短調のミサ」
モーツァルトの時代のピアノ
1779‐80年の教会音楽
モーツァルトの時代のウィーン
〈後宮からの逃走〉に至る道
モーツァルトと室内楽
モーツァルトと協奏曲〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
384
巻末の著者紹介によればH.C.ロビンズ・ランドンは、ハイドン研究の第1人者であり、モーツァルトに関する著作も多数あるとのこと。本書はそんなランドンの実に共感に満ちたモーツァルト讃。しかもただただモーツァルトを礼賛するのではなく、客観的な分析もなされている。もともとはモーツァルト200年祭のためにデッカ社から依頼されたもの。評伝に次いでモーツァルトの様々な側面にスポットを当てながら音楽を語っていくスタイルは、わかりやすくもあり、また説得力もある。これを読んでいるとモーツァルトの音楽に浸りたくなること必定!2021/10/27
nobi
44
ポピュラリティと革新性を併せ持ち、多彩な相貌のモーツァルトの生涯と楽曲の解説をこの分量に収める、という殆ど無謀な依頼を筆者は引き受けてしまう。それだけに、おびただしい作品が、しかしピタリと照準を合わせて連射されて来るよう。楽曲分析に留まらない。都市の文化レヴェル、取り巻く人たち、フリーメーソン、進化するピアノ等々、広範で深い知識が凝縮し、筆者の想いもにじみ出る23章。読みながら提示される作品のCDを聴いてゆくと、その軽やかさ、悲しみ、そして深さが一層心に響く。2015/02/28
Cs137
1
モーツァルトの生涯が簡潔に記されており参考になった。2017/03/16
FK
1
モーツァルトのCD全集を購入し聴いていってる。それにあわせて少しモーツァルトについても知りたくなってこの本を。簡略にその生涯を知ることができる。同時にその折々の作曲されたものが紹介されているので、ただちにCDでそれらを聴いてみた。/モーツァルトは、自ら天才だと知っていたのだろうか。副題に「天才の役割」とあるが、果たして彼自身はそのように自覚していたのだろうか。客観的にみてモーツァルトが史上まれなる天才であることは間違いない。それこそいまだにモーツァルトに匹敵するような作曲家が現れたとは思えないのだから。 2015/06/22
やま
1
著者はモーツァルトのレクイエムやロ短調ミサ曲を改訂している音楽学者であり、モーツァルトへの理解と愛情の深さが見て取れる。伝記としても秀逸。モーツァルトについての本は数多いが、これほどその魅力が伝わってくる本は珍しいだろう。2014/06/20