内容説明
強大なカリスマ性をもって、絶対主義政策・中央集権化を支持する官僚・公家・寺社勢力を操り、武家の身で天皇制度の改廃に着手した室町将軍足利義満は、祭祀権・叙任権などの諸権力を我が物にして対外的に〈国土〉の地位を得たが、その死によって天皇権力簒奪計画は挫折する。天皇制度の分岐点ともいうべき応永の時代に君臨した義満と、これに対抗した有力守護グループのせめぎあいの中に、天皇家存続の謎を解く鍵を模索する。
目次
天皇家権威の変化(親政・院政・治天の君;改元・皇位継承・祭祀)
足利義満の王権簒奪計画(最後の治天―後円融の焦慮;叙任権闘争;祭祀権闘争;改元・皇位への干与)
国王誕生(日本国王への道;上皇の礼遇;百王説の流布;准母と親王元服)
義満の急死とその後(義満の死と簒奪の挫折;皇権の部分的復活;戦国時代の天皇)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
304
本当かどうか不明だが足利義満が当時最大限の権力を持ち、朝廷に入り込んでたのは事実だと思うし、そういう考えもあったんだろうなと思った。もし義持が父の遺志を引き継いで引き続き朝廷にあたればまた歴史が変わってただろうな。ここで皇室が存続したことで歴史的存在になり、権威が飛躍的にあがったことを考えれば当時の後円融上皇の苦労は無事に報われたんだなと考える。歴史にイフはないが本書は中々面白い思考実験だな。2016/06/18
まえぞう
19
源氏と日本国王を読んだので、こちらも再読しました。有名な本ですが、やっぱりしっくりしません。歴史学者の方法は帰納的なものだと思っているのですが、まず結論があってその論証に都合のよい文献を選んでいるように見えてしまいます。2023/07/17
まえぞう
9
話題の「応仁の乱」の前に、同じ中公新書で1990年代に話題になった本書を再読しました。ちょうど応仁の乱の直前の時代ですが、参考になりました。ただし、義満が王権の簒奪を考えていたという結論は、少し急ぎすぎのように思いました。2017/03/05
不純文學交遊録
8
公武の頂点に立った日本史上屈指の権力者、足利義満。日本国王として明と交易し、上皇と同等の待遇を受け、子の義嗣は親王に準じた元服を行った。金閣寺の建つ北山第は、山荘どころか国家の中枢を担う政庁であり、宮殿であった。義満に皇位簒奪の意図はあったのか。現在の歴史学界では、概ね否定されている。本書が話題となったのは、昭和から平成への移行期(1990年)に出版されたことも大きい。それでも今日の室町時代研究の礎となった記念碑的な書であり、現在も入手可能なのは喜ばしいことである。2023/06/20
かんがく
8
足利義満が皇位簒奪を狙っていたというなかなか刺激的な説。武家政権と天皇の関係性が見えてくる。中世の天皇というとどうも地味なイメージがあるが、義満の従兄弟として対立した後円融、義満死後に復讐を行った後小松、戦国期に主体性を持って動いた後花園など、新たに興味を持った。2018/09/08
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