内容説明
1917年の革命によって誕生した無神論政府は帝政ロシアの精神的基盤である政教に激しい迫害を加えた。馴染深い玉葱形の聖堂、イコンが破壊されたのはこの時である。しかしキエフ朝以来1000年の歴史をもつ精神文化を破壊し尽すことはできず、政教の伝統は連綿と生き続ける。本書は、聖職にある著者が、ロシア精神の歴史をビザンチン、ヨーロッパとの深い関わりの中で捉え、政治・経済に向かいがちなロシアへの理解に新しい視座を拓く。
目次
第1章 聖なるロシアの起源
第2章 ビザンチンの精神文化
第3章 ロシアのこころ
第4章 ヨーロッパとの出会い
第5章 「ヨーロッパ」という問題
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ex libris 毒餃子
9
ロシアがギリシア正教を受容する話。ロシア正教の司祭が書いてあるだけあって宗教的側面の知識は補強された。2023/10/05
うえ
8
千年の美術史。「ロシア革命の時まで無数にあった聖堂の中をにぎわしていたキリストや聖書の中のできごとを描き出したイコンも、聖なるロシアを知るひとつの手がかりになる…聖像がなかったところは聖なるロシアに代わって、ソビエト・ロシアは革命の指導者や国の元首の画一的な肖像画を至るところに掲げている。それが、聖なるロシアの美的表現にかなうものでないのは、絵心のない者でもすぐに分かる。政治家の肖像画が、どれだけ精神的な安らぎをもたらしてくれるのだろうか。無神論者たちが聖堂破壊を盛んに行った時に壁画イコンも命を断たれた」2022/04/08
だいふく
7
罪と罰を読む前に、ロシア的なものの見方を把握したく読みました 本書は、知恵を信仰等の内的/論理等の外的に分けて、ロシア精神をギリシャ正教に立脚するものとして、その在り方を記述します ロシアは、非西欧のビザンツ帝国から内的な知恵(ギリシャ正教)のみを継受しました その結果、ピョートル大帝に至るまで、伝統と異なる外的な知恵、ましてや西欧的な合理的精神との接触はありませんでした ピョートル後、上層階級はうわべだけ西欧化を推進したものの、外的知恵を無理やり接ぎ木しただけで、自己の立ち位置を見失ったのです2019/12/16
Heyryo Motoyama
4
内容はロシア正教の歴史。精神の源はやはり宗教。ロシアがキリスト教を受け入れた経緯が書かれてある。キリスト教と同時にギリシャ哲学を導入しなかった事が残念であると…2016/10/08
ivnin
3
ロシアの文化の源流としてのギリシャ正教の紹介。ロシアはコンスタンティノープルから内なる智慧(修身)と外なる智慧(論理)を兼備するギリシャ正教を受け継いだ。しかし外なる智慧の消化を経ぬままにヨーロッパとローマンカトリックと関わったために、無神論の共産主義に至ってしまったという話。ビザンチン帝国やギリシャ正教から見る世界史について興味がわく。概略だからか論拠を省く事が多かったのが残念。2014/05/07
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