内容説明
餅や強飯がハレの食事に重要な位置を占め、伝統儀礼に伴う藁製品にモチイネを使うように、わが国には伝統的「モチ文化」がみられる。東アジアに目を向ければ粽、すしから酒づくりまで、モチ性穀類は日常的にも利用されている。この“ねばねば嗜好”はどう獲得され、定着したのか。著者は穀類のモチ性品種の栽培と利用の起源と伝播を探求し、ついに「モチ文化起源センター」を見出す。民族植物学の方法と成果をヴィヴィッドに示す。
目次
1 モチ文化とモチ性
2 モチ性の地理的分布とその民族植物学
3 東アジアのモチ文化をさぐる
4 センニンコクのモチ性
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fseigojp
25
アジアでも日本と長江流域からヒマラヤまでの、わりと限定された地域にモチ性穀物を偏愛する文化がある ああ、安倍川もちが食べたくなってきた2015/10/04
鯖
21
これにもいつごろから食べ始められたかの記述はなくて。稲でもうるち米と餅米ではデンプンの種類が違うので、餅になったりならなかったりするのだということは分かりました。トウモロコシにもこの餅っぽいデンプンを含むものがあり、アメリカでは資材として使われているとか。トウモロコシの餅も粟餅みたいにして食べたら美味しそうなのになあ。2015/04/14
印度 洋一郎
5
餅ではなく、「モチ」。これはイネ科の穀物の中で粘性、つまりモチ性のあるもの、そして、粘性は無いウルチ性でも「もち」のように加工されるものまで含んだ、幅広い「モチ」という食べ物に対する本。これを栽培し、食べる文化は、主として東アジア南東部~東南アジア北部にかけて限定されている、極めてローカル色の強いもの。日本の国内でも、アワやキビなどの雑穀モチがあり、朝鮮半島や中国の四川や雲南にも似たような文化がある。そこからは外れるが、北米にはモチ性トウモロコシが導入され、工業用澱粉の材料として大量に栽培されているという2014/06/17
やす
2
餅を通して日本人の食生活の歴史について学べて面白かった。2020/12/20
pepe
0
日本のみならずアジア大陸・東南アジア島嶼まで広がるモチの文化がなぜどのように成立したのかを、イネやモロコシなどモチ性をもつ様々な植物の系統から調べ、モチ性をもつ品種がヒトの選択によるという仮説を述べる。2021/11/20