内容説明
二月革命によるツァーリズムの終焉は、ロシアの社会秩序を急激に崩壊させた。政治上層部の暗闘をよそに、市民生活の安寧に影響の深かった旧警察権力は瓦解し、様々な犯罪、社会病理が噴出する。本書は、1917年3月から18年5月に至るペトログラードの市民生活を、「低俗新聞」の社会面に載った記事によって再現する、初めての試みである。政治によって社会が動かされ、社会が政治に影響していく歴史の全体像が活写される。
目次
第1章 二月革命の余波―社会秩序の亀裂(3月~4月)
第2章 不安な春―亀裂の拡大(5月~6月)
第3章 革命の暑い夏―犯罪の蔓延(7月~8月)
第4章 革命前夜―社会秩序の崩壊(9月~10月革命まで)
第5章 鉄の拳―ボリシェヴィキ政権の秩序回復
終章 ペトログラードにおける革命と犯罪
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
10
「社会運動史」ではなく「社会史」という切り口からの革命研究として塩川伸明に紹介されていた一冊。二月と十月の両革命に挟まれたペトログラードで、秩序の崩壊が生々しく描き出される。とりわけ、サモスード(私刑)の横行に注目したのは慧眼。興奮状態の群衆は、捕まえた犯罪者をその場で殺してしまうばかりでなく、やがては裕福な「悪徳」商人にも襲いかかった。同時期には警官や運送業者などが待遇改善を求めてストに訴える事象もあり、革命による権利意識の向上が却って混乱を招く皮肉な一面を示している。2022/10/30
nranjen
6
図書館本。これは自分的に大ヒット。ペテログラードの大衆新聞と言われる部類の三面記事を時系列に収集したもの。冒頭で表されている著者の狙い、ロシア革命を生きた庶民がどのような環境に置かれていたのかをを明らかにする試みは非常にうまく行っているように思われる。その点で他の歴史書とは非常に異なった本。泥棒、マフィア、民警、群衆、兵士。誰が盗み、誰が捕まり、誰が殺されるのか、正義のない世界で全く予知できない混沌とした状況がひしひしと伝わってきた。10月革命後の酒蔵襲撃事件の頻発もすごい。できればモスクワ版も欲しい…。2021/03/10
印度 洋一郎
4
ロシアの2月革命後の首都ペトログラードの状況を、大衆新聞の記事を紐解きながら概観。兎に角、治安の悪化ぶりが尋常では無く、毎日強盗、殺人、賭博、薬物密売、売春がてんこ盛り。ケレンスキーやレーニンが権力闘争をしている最中、庶民はこんな具合だった。腐敗した「民警」と呼ばれる刑事警察、停戦で戦場から戻ってきた脱走兵、そして犯罪者が街で連日大暴れ!という具合で、清掃や水道といったインフラも機能停止し、衛生状態も悪化。怒れる市民達は犯罪者の街頭リンチを初め、殺伐たる状況に。断固たる強権が待望されるようになるのも当然か2014/08/20
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3
2月革命以降のロシアの様子を、当時のロシアの大衆新聞の記事によってうかがう。強盗、強姦、殺人、賭博、詐欺、様々な犯罪が横行し、革命後のアナーキーな状態をまざまざと見せつけられる。民衆はリンチを行い、警察(民警)は権力を利用して窃盗をする、レーニンのいう、「世界で最も自由な国」がここにある。2014/02/13
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