内容説明
マフィアをシチリアを源とする犯罪組織とする見方があるが、本来は、シチリアの苛酷な風土・圧制の下で育まれた、名誉と沈黙を尊ぶ民衆の行動規範を意味する。民衆の「生の顕示」である特質を変え、犯罪組織としてイタリア近・現代政治を動かしたマフィアの実像に迫る。
目次
1 マフィアの誕生(名誉とオメルタ;農村から都市へ)
2 マフィア王国の成立(幼虫から蝶へ;ノタルバルトロ殺人事件;シチリア・ファッシ;初代の大ボス、ドン・ヴィート)
3 ファシズムとマフィア(マフィアとファシズムの共存期;「鉄の知事」モーリのマフィア撲滅政策)
4 シチリア独立運動と山賊とマフィア(連合軍シチリア上陸作戦への協力;シチリア独立運動;山賊ジュリアーノの生涯)
5 企業家としてのマフィア(大土地所有制は死に、マフィアは生き残った;シチリア・マフィアとコーザ・ノストラの連携)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aisu
8
テレビでイタリア語(旅するイタリア語)今期がシチリアが舞台で、マフィアは無視するのかなと思ってたら、割と時間を割いて紹介してた。マフィア撲滅運動とかを積極的に紹介して、今は安全ですよアピール。。。この本はテキストで紹介されていたものです。19世紀半ばから、最近まで(といってもこの本は1988年発行)。この本を読んだら、シチリア、イタリア(政府)とマフィアって切っても切れないものじゃ…と思えてくるのですが。2020/01/21
富士さん
2
再読。任侠を重んじるのにヤクザになる必要はないように、マフィアを組織としてではなく、シチリア人の社会性としてとらえているのがおもしろいと思います。歴史的な中間集団というのはこんな感じで、実際影響力を持ち得る中間集団というのはどうしてもこのような形を取らざるを得ないのではないでしょうか。中間集団ファシズムなる言い方をされている方もいらっしゃいましたが、抑圧的な国家権力への対抗軸としての中間集団は同じく抑圧的でないと有効でないということは、理想的な社会設計のためにはまず押さえておくべき事実だと思うのです。2017/03/21
unpyou
1
イタリア近代史の第一人者、藤沢房俊先生によるシチリア・マフィアを巡るシチリア近現代史。第二次大戦終戦時にシチリアを揺さぶった独立闘争と農地改革の陰で暗躍するマフィアらの、共産党を中心とした人民戦線を銃弾で排除する血生臭いエピソードを読むことで、イタリア近現代史に陰を落とす南北問題の深奥に触れられる、充実した歴史書。1988年に書かれた本書ではサルヴォ・リマやファルコーネ判事はいまだ対マフィア戦争の最前線にある人々として描かれている。ルーツは本書で理解できるので、'90年代の事件以後の動向について読みたい。2015/12/14
boyblue
1
シチリア島をイタリア半島より住みよい場所にという運動をイタリア人が起こすことはないから、シチリアン・マフィアがいなくなることは永遠にない。2010/01/18
rbyawa
1
シチリアって正直、何度読んでも北イタリアか南イタリアかよくわかんないなー、という気がしてならないのですが(いや、現在は分類されてますが)。正直、ちくま新書から出ている「イタリア・マフィア」よりもよほどスムーズに理解が出来た分、多分マフィアってのがもともとシチリアの風土に根ざしたものなんだろうなぁ、と思う。ある意味で中産層に根ざし、体力労働者にはいない(少なくとも上の階級はね)、というマフィアは搾取者っちゃあ搾取者だよね、けど、外から来ては通り過ぎる諸々の支配者たちにどうこう言われる筋合いもない。2009/11/15