内容説明
豊かな社会をめざした標準モデルがもはや力を失い、財政危機、高齢化、個人主義の尖鋭化と家族の危機など、さまざまな形をとったゆらぎ現象が産業化社会を襲っている。これからの社会はどうなっていくのか。そのヴィジョンを確立するためには近代(モダン)を構築した科学・人間・社会観を再検討しなければならない。このとき鍵となる概念こそ、モダンが排除してきた〈自己組織性〉である。新しい創造性を生む試みがここにある。
目次
第1章 産業社会のメタゆらぎ(産業社会のゆらぎ;新しい個人主義のパラドックス;差異のダイナミクス)
第2章 自己言及とゆらぎの科学(正統派パラダイムの弱体化;自己組織性というキー・ワード;自己言及のパラドックス;パラドックスへの挑戦;モダンの脱構築は可能か)
第3章 産業社会の散逸構造(ゆらぎ現象の具体例;高度情報社会の構図;付加価値性原理の生成;再び差異のダイナミクス;長寿化からみた社会シナリオ)
第4章 自省社会―リフレクションの世紀(産業社会の代償;リゾームという運動体;ホモ・リフレクト)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とーとろじい
3
著者は社会学上で権威のある人だろう。ルーマンの翻訳とか。本書は90年前後に書かれたものだがインターネット時代を先取りするような的確な指摘が多い。ポストモダニストに陥りがちな言葉遊びがない。 ルーマンから来る自己組織性という概念は主体客体の二項対立を超えた俯瞰的社会見取り図で、個々のカオス現象は結局一定の秩序ある運動に収斂するというポストモダンとモダンの折衷案として提示されている。インターネットにより個人が社会規範を構築するがその不安定性を許容するのが新社会だという。2025/06/11