内容説明
いま諸科学が各々の世界で変貌しようとしている。しかもそれは互いに連動し合っている。ゆらぎをはらんだ現実との対話によって自らもゆらぎを示す科学の実像とは何か。本書は生物学、霊長類学、経済学、数学、哲学の第一線が直面する課題を報告、そのもとに二重らせんとセントラル・ドグマ、部分と全体、ポパーの反証主義、カオスとフラクタル、自己組織性などをめぐって討論し、現代思想の核心に迫ろうとする、知的興奮に満たち試みである。
目次
第1部 報告(変貌する科学;ニュー・サイエンスへのオールド・ストーリー;全体から部分へ;夢と禁欲;数学と科学)
第2部 討論(分子生物学は何処に向かうのか;観察者の位置;社会科学の壁;テオーリア主義を超えて)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
大道寺
5
生物学や社会科学は科学に分類されながらも、科学的というには危うい側面がある。生物学へのホーリズム(全体論)の安易な適用、自然科学の理論の社会科学への安易な適用、社会科学は研究対象の社会との間で影響し合っているということ。そういった側面に着目しながら、5人の学者が議論する。1986年当時の学問の雰囲気を感じることはできるかもしれないが、「科学的方法とは何か」について知りたいなら、科学哲学の入門書でも読んでみるのがいいかもしれない。私にとってはちょっと期待外れの内容だったので、そのように思った。2011/04/08
にゃん吉
4
1980年代半ばになされた、生物学、霊長類学、経済学、数学、哲学の研究者による報告と議論。出版時から現在までに各分野の研究は相当進んでいるのだと思われ、議論にも古いところがあるのかもしれませんが、自然科学の最先端は全く門外漢の文科系の私には、十分刺激的で興味深くありました。また、佐和隆光氏の経済学(社会科学)に関する叙述について、文科系諸学における科学への憧憬みたいな部分とか、取り扱う問題の複雑、曖昧さ、学問の制度化の必要性、相当性といった実情が垣間見えるようで、また興味深くありました。 2021/01/04
可兒
4
ゼミ用。社会科学の科学性イカンについて重点的に読んだ2013/05/01
non
3
初出年代の問題もあり、今あらためて読む必要のあるものではないかもしれない。2013/02/06
Nozaki Shinichiro
3
哲学、生命科学、サル学、経済学、数学、全ての分野で従来とは別のアプローチが注目されているという話。全体を全体としてそのまま扱うことが、科学としてどういう意味を持つのか?と。異なる分野の専門家同士の対談が面白かった。2011/10/31