感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
108
著者も書かれているように、ちょうど年齢的には当時の海軍の本部中枢にも入らず、またそれ以降の年代でもないのでこのような著書が書けて冷静に分析できたということを言われています。確かに思い入れがある書き方ではなくいかに、日本の海軍が終戦まで組織として生き延びてきたのかを分析しています。陸軍は陸大を出ていないとえらくはなれなかったのが海軍は海軍大臣の一声である程度えらくなれることも書かれています。薩摩閥ですよね。2016/01/08
skunk_c
32
37年前の書で、著者は終戦直前に摩耶、武蔵で沈没経験を持つ兵学校出身の最若手将校で政治学者。自身の体験も踏まえて日本海軍を戦争、政治、体質の3点から批判的に論じている。もはや「古典」とも言える著書で、理系偏重でイギリス型の階層社会という体質に、文系的思考の欠如をうかがわせる教育体系が、政治的関与の弱さに繋がったという指摘は重い。また第1次世界大戦をきちんと分析しなかった(これは陸軍にも言える気がするが)ことが、戦艦による決戦主義と輸送船を沈めようとしない体質、真珠湾攻撃の不徹底に繋がるとの見方。なるほど。2018/08/16
ぴー
22
初版が1981年なので、約40年以上前に書かれた本。昭和期の海軍の評価が全体的に辛いと感じた。明治期の軍人と昭和期の軍人を比較している箇所では、昭和期の軍人を辛辣に述べている。海軍は陸軍に比べて穏健で冷静であったというイメージに対して、一石を投じた本であったかもしれない。少し古い本ですが、スラスラと読めて理解しやすい印象でした。また、現在の昭和期の海軍の歴史的評価が気になりました。2024/09/22
ステビア
22
近代戦の特質を理解し、そのために自己革新することができなかった点では陸軍と同じ。戦争の抑止力となることもできなかった。2022/04/07
Michael S.
10
「短剣と白手袋に象徴されるスマートな清潔さの奥に潜む,このずるさと無責任さとひよわさ」(序文)と表現される海軍の体質的欠陥を戦争観,政治観,教育観などから論じている.いわゆる「海軍善玉論批判」の原典的な本だと思う.海軍は大艦を操作する必要から理数系重視の技術官僚集団である.彼らは省益にはこだわるが国家全体への視点は大いに欠けた.その体質的欠陥を敷衍すれば,日本の高等教育(特に理科系)人材養成の欠点に通じるものを感じた.時節柄,コロナ禍での政府周辺の感染症専門家たちにも同じような”ずるさと弱さ”を感じる.2022/01/19