感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
1959のコールマン
44
☆4。未だに絶版になっていない、超ロングセラー本。前半と後半で評価が分かれる。前半は、古いとはいえ資料をもとに控えめに語っているが、後半になるとちょっと強引な論を展開。また、1966年初版の古い本で、法律、風習、その他諸々大分変っている所があると思うので、その点は注意しながら読む事が必須であろう。もちろん沢山の示唆に富む文章はあるが、そのまま引用または話のネタにすると大笑いされるものもあるので、私は古き良き名著(小説?)のつもりで読みました。2019/12/13
Miyoshi Hirotaka
37
文化や文明は多層で構成されている。食生活も皮膚や髪の色の違いと同じように個人の差は僅かでも集団になると大きな違いを生んできた。ザビエルが後任の条件としたのは粗食に耐えること。幕末に来日したハリスが要求した牛の放牧と搾乳は当時の日本人には理解不能。開国以来洋風化したとはいえ、欧米とわが国では、何を食べるかで大差がある。これに起因する思想的伝統、階層意識、社会意識の違いは宗教より深い層で作用している。食文化に口を出されると嫌悪感をもったり、極端な菜食主義に違和感を覚えたりするのは、これらの仕組みに由来する。2024/04/25
逆丸カツハ
34
古いのと推論が多めなので、ある程度半信半疑ではあるが、まぁなかなか面白かった。西洋文化に直面した明治の人々の戸惑いがある程度説明される感じ。今起きていることへの戸惑いもいつか説明されていくのだろうか。2025/03/29
nobody
19
失敗作、失望。全ての本はトンデモ本の可能性を胚胎している。主観を断定する岸田秀的風味。「社会意識」の用語を出して決定的破綻を来たす。著者も「第三章以下については参考文献はない」と語るに落ちている。精読しても「社会意識」の語義説明はなく(即ち直接的な解説はない)、読み返して畏れ多くも用例からやっと意味を推察するものの、さらに「階層意識と社会意識のからみあい」と発展し、「からみあい」というのは応急的な軟化用語なのだろうと思ったらそのままスルー。自分勝手に設定した仮定を駁すという懐しき詭弁の常道。「したがって」2020/05/19
lily
18
穀物生産に優れた日本では肉食はぜいたくでありコメの主食と副食の概念が生まれたが、牧地の多いヨーロッパではパンがぜいたく品となり、主食の概念が根付かず肉食が主流となった。ヨーロッパの肉食はキリスト教と結びついて人間と動物の断絶論理につながり、人間上位の個人主義や、動物と見做したものへの残虐性を加速させていく…と論理展開が神がかった一冊。肉食がヨーロッパの階層意識や社会意識につながるという観点は目から鱗。気候や植生は人間の精神性にも影響することがよくわかる。これって一種の地理学だよなー。2024/05/20