出版社内容情報
昨日までそばにいた夫は一体どこに行ってしまったのだろう。
四十九日、形見分け、お墓のこと、供養、そして夫の不在を埋めるそれぞれの過ごし方……。
さまざまな思いを巡らせた「未亡人倶楽部」の一年を描く。
内容説明
「昨日まで確かにそばにいた夫はいったいどこに行ってしまったのだろう」夫を亡くしたばかりの美土里と、彼の忘れ物をきっかけに知り合った三人の女たち…。「未亡人倶楽部」の彼女らが過ごした一年間を描く傑作長編。
著者等紹介
村田喜代子[ムラタキヨコ]
1945年、福岡県生まれ。77年、「水中の声」で九州芸術祭文学賞最優秀作を受賞し、本格的な執筆活動に入る。87年、「鍋の中」で芥川賞を受賞、90年『白い山』で女流文学賞、92年『真夜中の自転車』で平林たい子賞、98年「望潮」で川端康成賞、2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞、14年『ゆうじょこう』で読売文学賞、19年『飛族』で谷崎潤一郎賞、21年『姉の島』で泉鏡花賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちゃちゃ
74
もし夫に先立たれて独りになったら、私は何を思うのだろか。本作は「心の地獄」というキーワードが、三人の未亡人の来し方をゆるやかに照射し浮き彫りにしていく。夫の死後一年足らずで縁あって出会った美土里、美子、辰子。ほどよい距離感を保ちながら互いを気遣う三人の関係性が心地よい。作者村田さんは三年前に御夫君を亡くされたそうだが、その死生観がしみじみと行間を満たしているように感じた。亡き夫の魂の気配を感じながら暮らす孤独な日常。仲間と繋がり、軽やかに生きていく女性たちの姿が心に響く。好みの逸品だった。2025/06/16
Ikutan
63
『未亡人』って言葉は、妻が夫の付属物みたいで抵抗があるのですが、こちらは、遺された妻たちの『未亡人会』を描いた作品。コロナ禍に夫を亡くした美土里は、同じ境遇の美子、辰子と出会い、お墓や供養のことや様々な想いを語り合うことで、少しずつ喪失と向き合っていく。『地獄草紙』から俳句を詠むことで死後の世界に想いを馳せ、お経を唱えることで心の安寧をもたらす。園児と幼稚園の先生が作った団子虫経は微笑ましくて頬が緩んだ。お精露さまを背負うという慣習は知らなかったな。村田さんの経験から紡がれたじんわり心に染みる一編でした。2025/05/20
たま
62
夫を亡くした美土里が同じような境遇の女性たちと交流する。『飛族』や『姉の島』にはこの世とあの世のあわいを生きているかのような高齢女性が登場し印象深かったが、美土里はまだ70代でこの小説は現実的。作品世界に浸るというよりは、夫の死から初盆までのあれこれを(九州の山村ではお墓からお精露さまを背負って山道を降りる、一方北九州市の美土里はお坊さん抜きで好きなお経を音読する)を身辺雑記のように読んだ。幼稚園のダンゴ虫経が傑作で、幼女の(かぐや姫は)「きたから、帰るんです」発言は衝撃的だった。2025/06/08
pohcho
60
夫を亡くし、一人暮らす美土里の物語。夫が入院していた病院や、パソコン教室などで出会った女性たちと交流する日々が描かれる。「まーるーまーるこーろこーろー ぷーちーぷーちーこーろこーろー」幼稚園児の「団子虫経」がめちゃかわいくて最高。初盆の供養に家族自らがお経を読むのもよかった。後家の家に村の女衆が泊りに行くとか、お精露さまを迎えに行くなどの田舎の風習が不思議で心に残る。自分はまだ夫を亡くした時のことなど想像もできないけど、こんな風に生きられたらそれはそれで幸せかも。2025/05/12
kei302
45
「未・亡・人」確かに妙な言葉です。古い時代の慣習(?)とは知りませんでした。老境小説がじわじわと染み入る年頃となりましたのが、まだまだ村田喜代子先生のような境地には至らず。未亡人宅に順番に泊まりに行く集落に驚いた。2025/04/30