出版社内容情報
愛猫の突然の失踪に悲嘆に暮れる百鬼園先生。使っていた座布団に、好物の寿司に、在りし日の猫の姿が思い出されて涙が止まらない。新聞広告を打ち、貼紙をして帰りを待つ。中公文庫『ノラや』から、随筆を精選、「猫を探す」広告ほかの写真を口絵に収録。
(目次より)
彼ハ猫デアル
ノラや
ノラやノラや
千丁の柳
ノラに降る村しぐれ
ノラ未だ帰らず
ネコロマンチシズム
垣隣り
「ノラや」
内容説明
ノラいまだ帰らず。愛猫の突然の失踪に泣き暮らす百鬼園先生。ロングセラー文庫より九篇を精選。「猫ヲ探ス」新聞広告ほか口絵八ページ。
目次
彼ハ猫デアル
ノラや
ノラやノラや
千丁の柳
ノラに降る村しぐれ
ノラ未だ帰らず
ネコロマンチシズム
垣隣り
「ノラや」
著者等紹介
内田百〓[ウチダヒャッケン]
明治22年(1889)、岡山市に生まれる。六高を経て、大正3年、東京帝大独文科を卒業。この間、漱石の知遇を受け、門下の芥川龍之介、森田草平らを識る。以後、陸軍士官学校、海軍機関学校、法政大学などで教鞭をとる。昭和46年(1971)4月、死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こまり
22
口絵にノラを探す新聞広告が何枚もカラーで載っていた。まずそれだけでグッとくる。野良猫を飼い始めたころの楽しそうな「彼ハ猫デアル」から居なくなった時の「ノラや」。探し続けている時の「ノラや、ノラや」他ノラの事を綴った9編の随筆集になっている。日々涙を流し風呂にも入れなくなるほどの喪失感が痛々しい。猫を飼っているとその気持ちが良く分かるので読んでいて苦しくなる。猫の表情、しぐさなど、こんなにもちゃんと猫を見ていたことに驚く。「ノラや」を一度も読み返すことができなかった百閒さんの慟哭が聞こえるようだった。2024/11/23
ぺん
6
内田百閒の文章をが褒められるのをよく見る。猫飼い始めてからは"ノラや”の評価も目にするようになり、気になる作家・作品であった。読んでみて正直なところ、文章すごいとは思えなかった。なんせ、日記の前後に断片的な文章が書かれているだけ。その文章も尻切れトンボで終わる。しかしながら、全体が「猫を愛する者の魂の悲しみ」みたいなものをものすごくリアルに表現しているように感じた。自分の猫がもしいなくなったら、その時の自分の心が見えるようだ。百閒先生と一緒に嘆き悲しむと同時に、家の猫をむやみになでて嫌がられるのだった。2024/12/16
ブネ
3
【MEMO】 愛猫の突然の失踪に悲嘆に暮れる百鬼園先生。 使っていた座布団に、好物の寿司に、在りし日の猫の姿が思い出されて涙が止まらない。 新聞広告を打ち、貼紙をして帰りを待つ。中公文庫『ノラや』から、随筆を精選、「猫を探す」広告ほかの写真を口絵に収録。2024/10/13
Yasuyuki Kobayashi
2
黒澤明「まあだだよ」の原作の一つとなった随筆集。 猫好きには面白いが作者と同じで読んでいるあいだ 切なくて悲しくなる。 2024/09/27
ume-2
1
2024年9月初版。「本書は、内田百閒『ノラや』所収の、飼い猫ノラに関する随筆を採録したものである」と付記にある。初出は全て小説新潮掲載の9編。見開きのいかめしい顔をした百閒やノラ捜索の折り込みちらし群の画像、有名な「春夏秋冬日没閉門」の瀬戸物の標札を打ち付けた門柱の写真が貴重。いやなものはいやな、いかめしい百閒が居なくなった猫を思い1年余り泣き続く姿がかなり意外。昔飼い猫が帰ってこなかった思い出のある身としては、ノラの行方が分からないことが辛いのだと思う。ノラが闊歩する日常が失われたことが何より苦しい。2025/04/08