出版社内容情報
村上春樹の最初の短篇小説集を単行本で復刊。
夏の芝生、雨の午後。その手触りは決して褪せることがない――
内容説明
『風の歌を聴け』でデビューし、翌年『1973年のピンボール』を発表。フィッツジェラルドの翻訳に取り組み、『羊をめぐる冒険』を執筆。その頃書かれた7作品が、この『中国行きのスロウ・ボート』には収録されている。村上春樹の最初の短編小説集にして記念すべき安西水丸さんとの初仕事。1983年刊行の単行本を当時の装幀のまま復刻。“復刊に寄せて”新たに序文を収録。
著者等紹介
村上春樹[ムラカミハルキ]
1949年京都市生まれ。早稲田大学卒。79年『風の歌を聴け』で「群像」新人賞、85年『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』で谷崎潤一郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たいぱぱ
59
30年ぶりの再読。これだよこれ。村上さんが奏でる他の人には真似できない独特なリズムが心地良い。25歳だった僕は村上さんが「何かを言いたい」と感じたが理解出来なかった。もう少し大人になったらそれが理解できるだろうと漠然と考えてました。しかし55歳になっても今でも理解できませんでした。ただただリズムに酔うのみ。「ニューヨーク炭鉱の悲劇」「午後の最後の芝生」が特に印象的でしたが「カンガルー通信」にいたっては、なんだコイツ…と引いてしまいました。最後に羊男が出てきたなんて全く覚えてなかった。あの挿絵は合わないな。2024/12/03
キク
59
【午後の最後の芝生】すごくファンが多い短編。水丸さんや陽子夫人も好きと公言していたと思う。「僕」が15年前の芝刈りのアルバイトを回想する。その回想によって現在地点の「僕」が揺さぶられる最後は「ノルウェイの森」とすごく似ている。主人公は「芝を刈る」という行為を金銭を得るための労働とは全く捉えていない。評価されるかどうかにも関心がなく、ただ「あるいは自分の誇りのために」真摯に草刈りを行う。その行為をとおして世界や自分と向き合おうとする。それは村上春樹が小説を書くことで行おうとしていることと同義なのかもしれない2024/10/10
アナーキー靴下
54
お気に入りの方の「午後の最後の芝生」のレビューにあった、真摯に草刈り、私そんな意識持ったことないなと気になった。読むと自分のことより若い頃に何組か見てきた遠距離恋愛失敗した友人知人を思い出した。当時私は男性側から話を聞いただけだけど、やっぱり女性の浮気か、別れた後女性が先に結婚、だった。にも関わらず、堅実でいい奴な男性に対してあまり同情の気持ちは湧かず、相手の女性はつらかっただろうなとばかり思ったし今また思う。他に印象に残ったのは表題作、このまるごと弁明のような作品に他の読者は何を読み取るんだろう、と。2024/12/15
キク
54
【カンガルー通信】デパートの苦情係である「僕」が、苦情の差出人である女性にテープで吹き込んだ個人的な長いメッセージを送る。そのテープ音声のみで短編が構成されている。「僕はあなたの手紙を家に持って帰って以来、ずっとあなたと寝ることばかり考えています」といった性的なメッセージすら入る。春樹さんなのでぱっと見は牧歌的なんだけど、かなり異様な話だ。でもこんなリスキーなメッセージを会ったこともない苦情客に送らなければならなかった「僕」の抱える孤独を思うと、怖いというより辛くなる。怖くて切ない短編。 2024/10/08
キク
51
【中国行きのスロウ・ボート】村上春樹の最初の短編集であり、安西水丸の最初の文芸書の表紙作品であり、村上春樹と安西水丸の最初のタッグ作品。表題作は村上春樹の最初の短編でもある。この短編が30歳の新人が書いた最初の短編だという事実に本当にビビるというか、まぁ村上春樹なんだしと納得というか。「だからもう何も恐れるまい。クリーン・アップが内角のシュートを恐れぬように、革命家が絞首台を恐れぬように。もしそれが本当にかなうなら」若い村上春樹の決意に、その後の歩みを知る読者としては、ちょっと泣きそうになった。2024/10/02
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