出版社内容情報
貧乏なのに、紙幣の顔。生まれは裕福、晩年は借金三昧。いくら稼ぎ、いくら借り、何を買い、何を思ったのか?金銭事情で読み解く、日本初の女性職業作家の新しい姿。
内容説明
「金銀はほとんど塵芥の様にぞ覚えし」貧乏なのに、紙幣の顔。生まれは裕福、晩年は借金三昧。いくら稼ぎ、いくら借り、何を買い、何を思ったのか?金銭事情で読み解く、日本初の女性職業作家の新しい姿。激動の時代を生き、24歳で貧苦の内にこの世を去った樋口一葉。その生涯とお金との関係は、矛盾と逆説に満ちている―
目次
序章 樋口家、江戸へ出る―山梨の百姓から直参の御家人へ
第1章 桜木の宿 七歳まで―樋口家の経済闘争
第2章 二つの挫折 七歳から十五歳
第3章 悲劇の幕開け 十五~十八歳
第4章 恋と文学と借金と 十八~十九歳
第5章 デビューと失恋 十九~二十歳
第6章 間奏 二十~二十一歳―大成のための寄り道
第7章 貧困という鉱脈 二十二~二十四歳
終章 一葉の値段
著者等紹介
伊藤氏貴[イトウウジタカ]
1968年生まれ。明治大学教授。専攻は美学、文藝思潮(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kawa
35
「奇跡の十四ヶ月」と称され病没までの短期間に「たけくらべ」等の名作を連発した樋口一葉の生涯を経済面から赤裸々に描く。山梨の農村を出奔した父母、幕末の荒波の中それなりの成功を収めるが、明治の世で事業の目論見違いや家族の病気で徐々に困窮していく。父親の死後、戸主となった彼女も引き継いだ借金生活を文筆業でしのごうとするがうまくいかない。そんな中、幸か不幸か当時の最底層の人々の生活を知り、それらをリアルに描くことが傑作小説誕生の原動力となる。彼女の人生を振り返りつつ、維新前後の経済情勢も垣間見れる興味深い良書だ。2023/02/06
tom
21
書名が気になり借りて来る。一葉の残した日記をベースにして、彼女の経済生活を分析する。宵越しの金がない。当然のようにして借金する。借金を頼む人が来る。そうですかと、金もないのに貸してしまう。知人が訪問する。鰻やら寿司をご馳走する。母や妹と女浄瑠璃を聞きに行く。著者は、一葉の経済観念のなさを嘆く・・・。しかし、一葉は貧乏暮らしの経験があったからこそ、周りの女性作家とは異なるテーマを得ることができ、5000円札に登場するまでの社会的評価を得ることができた。これが著者の結論。2023/04/01
detu
19
図書館新刊棚より。なぜか『樋口一葉』とあるだけで反応してしまう。言うほど一葉ずきでもないのに。たけくらべ、大つごもり、など有名所をかじったくらい。それもよく分からなかった、というのが本音。五千円札で初の女性肖像画になった。著者いわく「借金まみれで貧困に苦しんだ一葉がお札の肖像画に使われるなんてあの世で苦笑いしてるかも」とにかく金銭感覚が異常だ、としか言いようがない。奇跡の14ヶ月と言われる末期についての考察はなるほどと頷く。貧困生活がなければ珠玉の名作は生まれ得なかったと。改めて読み返してみたい、一葉。2022/12/26
Matoka
13
16才で樋口家戸主となり、17才で父を亡くし母と妹を戸主として養うことに。(今でいうヤングケアラー?)当時、女性がつける職業は少なく貧困から抜け出すために小説家を目指す。ただ次第に目的はお金ではなく千年先にも名前が残るような自分でも納得のいく文章を書くことへと変わっていく。借金を重ねつつも客人を鰻でもてなしたり寄席に行ったりとお金の管理ができる人が家族の中に1人もいないので借金はふくらむばかり。こんなにもお金に苦労した人が今やお札の顔になるという…。彼女が24才という若さで亡くなったことも知らなかった。2023/04/14
そうたそ
12
★★★☆☆ 樋口一葉の人生を"お金"という観点から主に描いた評伝。樋口一葉がどんな人物であったかは、そもそもあまり知らない。貧しかっただとか、夭逝したという程度のイメージしかない。故に、貧困にあえいだ若くして世を去った天才、という印象を持っていたが、本書を読む限り、何とも人間臭い部分が多々感じられる。そして、樋口一葉を後世まで伝えられるような天才作家たらしめているのは、貧困であるといっても過言ではない、というのも何とも皮肉な話。いい意味で樋口一葉という人の見方が変わる、非常に読みやすい評伝だった。2023/04/26