出版社内容情報
【紀伊國屋書店チャンネル】
芦沢 央[アシザワヨウ]
著・文・その他
内容説明
一九九六年、横浜市内で塾の経営者が殺害された。早々に被害者の元教え子が被疑者として捜査線上に浮かぶが、事件発生から二年経った今も、足取りはつかめていない。殺人犯を匿う女、窓際に追いやられながら捜査を続ける刑事、そして、父親から虐待を受け、半地下で暮らす殺人犯から小さな窓越しに食糧をもらって生き延びる少年。それぞれに守りたいものが絡み合い、事態は思いもよらぬ展開を見せていく―。
著者等紹介
芦沢央[アシザワヨウ]
1984年東京都生まれ。2012年『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。同作が15年に映画化。18年『火のないところに煙は』が静岡書店大賞を受賞。吉川英治文学新人賞、山本周五郎賞、本屋大賞、直木賞など数々の文学賞にノミネートが続いている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
531
10月の第一作は、芦沢 央の作家生活十周年記念の最新作です。芦沢 央、4作目、本作は骨太な社会派ミステリでした。もう少しサプライズが欲しかった気がします。 https://shosetsu-maru.com/interviews/authors/quilala_pickup/168 2022/10/01
青乃108号
506
1996年までの「優生保護法」が暗い影を落とす悲しい物語。その時代「精神薄弱者」と称されていた男は断種の手術を施され、指導してくれた「センセイ」を殺してしまう。どこまでも無垢な男として描かれている彼が果たして殺人まで犯してしまうものなのか?その場面は直接的には描かれていないし、彼自身「気がついたら殺してしまっていた」というような供述をしている。このように肝要な場面を意図的にぼやかし曖昧に語ってしまうスタイルの作品は良く見かけるが、俺は好きでない。全体的には好印象を抱いた物語だっただけにそこだけが残念です。2024/01/27
イアン
411
★★★★★★★★★☆作家生活10周年記念作と銘打たれた芦沢央の長編。横浜市内で塾経営者が殺された。やがて捜査線上に元教え子の男が浮上するが、突如足取りが途絶えてしまう。事件を追う窓際刑事、男を匿う女、父親から虐待を受ける少年とその友人。計4名の視点からなる群像劇だが、つい二十数年前まで存在した悪法に深く切り込んだ社会派としての側面も持つ。なぜ男は恩師を手に掛けたのか。生きる意味を見失った少年の人生はどう交錯するのか。「イヤミス」と「短編集」のイメージが強かった芦沢央の新境地ともいうべき傑作ホワイダニット。2023/01/14
のぶ
314
よく練られた構成のミステリーだった。冒頭で塾の経営者の男性が殺害された。容疑者と目されているのは、元教え子の男。その男を追う刑事たちがいる。その男を匿う女がいる。その男に食べ物を分け与えられて、命をつないでいる小学生もいる。一見、群像劇のようにも思えるのだが、読み進むにつれて、ストーリーを追うだけで十分という類いの本ではないことが分かってくる。それぞれの登場人物が抱える苦悩に胸が締め付けられるような感覚を思える。さまざまな読み方が可能な作品だと思うが、単純な犯人捜しで終わらなかった奥の深い一冊。2022/08/23
美紀ちゃん
279
良かった。阿久津弦の人生も波留の人生も凄まじい。驚いた。当たり屋を小学生の息子に強要する父親。死を意識して恐ろしいはず。戸川先生の存在は大きく道標だった。それを大事に持ち続けていた阿久津弦。母にとっても?優生手術→不妊手術。知らなかった。旧優生保護法。阿久津弦の母親は正しいことだと信じて、取り返しがつかないことをしてしまった。母は罪に問われないのか?波留が警察の人から林間学校へ参加すると説明を受けたところでグッときた。みんな優しい人ばかり。光さすラスト。P263から中学校図書館に入れるには注意が必要。2022/09/23