出版社内容情報
新央出版の編集者・葛城梨帆の元に突然、原稿が届く。それは以前新人賞で落選した志村多恵からのもので、学生時代の友人が時を経て再会するところから物語は始まっていた。立場の違う二人の会話はすれ違い、次第に殺意が募っていく。「いっそのこと、最後にこの女を殺してやろうか」――。そんな物語の女たちの苦境に思いを馳せるうち、梨帆自身も忘れられない出来事と原稿内容がリンクし始める……。
私たちのシスターフッドがここにある、著者渾身のミステリー。
内容説明
新央出版の編集者・葛城梨帆の元に突然、原稿が届く。それは以前新人賞で落選した志村多恵からのもので、学生時代の友人が時を経て再会するところから物語は始まっていた。立場の違う二人の会話はすれ違い、次第に殺意が募っていく。「いっそのこと、最後にこの女を殺してやろうか」―。そんな登場人物の苦境に思いを馳せるうち、梨帆自身の忘れられない出来事と原稿内容がリンクし始める…。私たちのシスターフッドがここにある、著者渾身のミステリー!
著者等紹介
葉真中顕[ハマナカアキ]
1976年東京都生まれ。2013年『ロスト・ケア』で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビュー。2019年『凍てつく太陽』で第21回大藪春彦賞、第72回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
385
葉真中 顕は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、頁数から短編集かと思いきや、桐野夏生的なイヤミス中篇でした。これはこれで面白いですが、作中小説の「犬を飼う」を前面に打ち出した方が、良かったかも知れません。 https://www.yomiuri.co.jp/life/digilife/online/20210305-SYT8T1879963/2022/04/15
イアン
306
★★★★★★★☆☆☆299冊目はイヤミステイストな葉真中顕の長編。編集者・梨帆の元に届いた一冊の原稿。それは過去に梨帆が可能性を感じながら新人賞を逃した主婦による私小説だった。夫からの理不尽な仕打ちと殺意を綴ったその作品は、なぜ7年を経た今送られてきたのか。繊細な筆致で綴られた怒り・焦り・諦念は女性作家と見紛うほど。SFホラー風の作中作(いや、作中作中作か)『犬を飼う』も衝撃的だが、どうせなら梨帆が大絶賛する『銀の船にきみを乗せて』も読みたかった。さて、区切りの300冊目はあの作家の記念碑的作品にしよう。2022/08/24
fwhd8325
265
冒頭の「犬を飼う」を読んだときに、厄介な作品なのかと不安になりました。読み進むうちにその不安は薄れていくのですが、厄介な物語なのは変わりません。とても不思議な作品だと思いました。そして、今までの葉真中作品とは違う世界に、戸惑いもありました。しかし、それが持ち味というのでしょうか、魔力に引き込まれるようでした。2022/08/08
まちゃ
230
新央出版の編集者・葛城梨帆の元に届いた原稿。作者は以前新人賞で落選した主婦の志村多恵。多恵作の作中作とリンクして進む、編集者と主婦、二人の女性の苦悩。作中作が出てくる小説は入れ子構成のせいで読み難いという先入観がありましたが、結構読み易かったです。行き難さを抱えた女性の長い午後。大きな山場があるわけではありませんが、最後まで読ませる不思議な作品2022/04/19
いつでも母さん
225
志村多恵作の小説が二編。7年前の『犬を飼う』そして今『長い午後』その私小説の様な作品に編集者・葛城梨帆が取り込まれる不穏な空気が重く苦い。小説の中の人物にも莉帆や多恵にも共感など出来ないのに、何処に向かうのか気になってページを捲った。「あなたの共犯者になって」・・その先には何が?そして、私の午後はいつまでだろう。2022/04/11