出版社内容情報
こんな人生に、使命は宿るのか。片足の祖父、不登校の甥、大切な人を失ったみのり。絶望に慣れた毎日が、一通の手紙から動き出す。慟哭と感動の傑作長篇。
内容説明
今、だれもがスタートを待っている。周囲の人々が“意義ある仕事”に邁進する中、心に深傷を負い、無気力な中年になったみのり。実家に届く不審な手紙、不登校になった甥の手で祖父の過去がひもとかれるとき、みのりの心は、予想外の道へと走りはじめる―。
著者等紹介
角田光代[カクタミツヨ]
1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年「幸福な遊戯」でデビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、2003年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、05年『対岸の彼女』で直木賞、07年『八日目の〓』で中央公論文芸賞、11年『ツリーハウス』で伊藤整文学賞、12年には『かなたの子』で泉鏡花文学賞及び『紙の月』で柴田錬三郎賞を、14年『私のなかの彼女』で河合隼雄物語賞、21年『源氏物語』の完全新訳で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
425
角田 光代は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。久々の新作長編でパラリンピックを描いていると言うことで、パラリンピックの期間に、期待して読んだのですが、書きたいこと(ボランティア、難民、パラリンピック、東日本大震災、コロナ禍)が多過ぎたのか、新聞小説だからなのか解りませんが、テーマが散漫で著者としては残念な作品でした。ドラマや感動が、足らんと(タンラント;博多弁風;笑)! https://www.chuko.co.jp/special/talant/2022/03/10
うっちー
261
年寄りの私でも何かを始めようと、前向きにしてくれる作品でした2022/06/01
こーた
247
どうやったらこんなに巧く重ねられるんだろう。本を読んでいて、何の脈絡もない(ようにおもえる)記憶が、ふっと立ち上がってくることがある。それとおんなじような感覚で、体験や会話、記憶がすっと差し出されるから、まるで自分の経験したことみたいにかんじる。そこに僕自身の記憶も重なる。僕の祖父も戦争の話はしたがらなかった。僕の祖母は感情をあらわすことがなかった。ふらっと異国へ行ってしまう友人が、僕にもいた。彼ら彼女らが、登場人物に織り重なって、ほんとうに〈いる〉みたいにおもえてくる。なぜ知りたいのか。⇒2022/12/16
tetsubun1000mg
235
角田さんはどちらかといえば日常を描くという印象でした。 大学時代にボランティア活動のサークルに入会して生涯の友達を得て、アラフォーとなる20年後とを行き来しながら、祖父や他の登場人物の視線でも描かれる。 ネパール、中東、東日本大震災のボランティアやツアーに参加するのだが、自発的に行動しているのに周囲の声やSNSの揶揄に耐えられなくて心を閉ざしてしまう。 祖父や甥っ子の経験にも繋がっていくのが次第にわかってくる。 紛争や戦争、災害とパラリンピックの歴史も取りまぜて角田さんの作品のなかで一番の出来だと思った。2022/04/04
美紀ちゃん
229
走る練習会の同期だったじーちゃんの清美が心の支えになっていた。じーちゃんの秘密がすごい! カッコいい!じーちゃんのことが知りたくて後半一気読み。「20年も手紙を送り続けてはじめて返事をもらった、神様から返事をもらった感じ」と涼花さんが言った時にグッときた。不登校の玲が学校に行きたくなった話もすごい。それだけでも1冊になるよね。百タラント太っ腹だね。私も誰かに百タラントあげてみたい。ムーミンがみのりにタラントを教えてくれたのだと思う。泣ける。テーマ盛りだくさんだがちゃんと繋がっていて必要な話。良かった!◎2022/06/03
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