出版社内容情報
愛する人たちの死について書くというのは、書くということそのものと同じくらい古い行為のはずだが、いざそれをするほうに自分が傾くと、即座にことばに詰まってしまう。メモを取っておこうと自分が考えていることにぞっとなり、恥じ入りながらメモを取り、メモを修正している自分を見損なう。情動的にかき乱される原因は、父が有名な人だったことにある。書きとめておく必要をおぼえる背後には、この野卑な時代の中で自分自身の名声を高めたいという誘惑が潜んでいるかもしれない。もしかすると書きたいという呼び声に抗して、謙虚に黙っていたほうがいいのかもしれない。謙虚なふるまいというのは、実のところ、僕の一番好きな虚栄の形態なのだ。しかし、書くということに関してよくあるように、主題のほうが書き手を選んでくるという面もあり、抵抗しても無駄なのかもしれない。
――本書より
内容説明
ノーベル賞作家であることを超え、ラテンアメリカ人全体の祖型のような存在となったガルシア=マルケス。映画監督の道を選んだ長男ロドリゴが繊細かつ誠実に綴った父と母の思い出。
著者等紹介
ガルシア,ロドリゴ[ガルシア,ロドリゴ] [Garc´ia,Rodrigo]
1959年、コロンビアに生まれ、メキシコ・シティとバルセローナで育つ。映画監督・脚本家。父はノーベル賞作家のガブリエル・ガルシア=マルケス(1927‐2014)。ハーヴァード大学で中世史を学んだ。これまでに、『彼女を見ればわかること』『美しい人』などの長篇映画の他に、テレビやウェッブ上のドラマ・シリーズを多数、監督している
旦敬介[ダンケイスケ]
1959年生まれ。東京都出身。作家・翻訳家。明治大学国際日本学部教授。ラテンアメリカ文学を専攻。2014年、『旅立つ理由』で第65回読売文学賞(随筆・紀行賞)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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