出版社内容情報
出会って好きになったクマさんは、日本に暮らすスリランカ人。
バツイチ、子供アリのミユキさんの恋には
思いがけない障壁が立ちはだかって!
内容説明
シングルマザーの保育士ミユキさんが心ひかれたのは、八歳年下の自動車整備士クマさん。娘のマヤも面倒見のいいクマさんに懐いて、すったもんだはありつつも、穏やかな日々が続くはずだったのに…。出会って、好きになって、ずっと一緒にいたいと願う。小さな幸せが突然奪われたのは、彼がスリランカ出身の外国人だったから。
著者等紹介
中島京子[ナカジマキョウコ]
1964年、東京生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒。出版社勤務、フリーライターを経て、2003年に小説『FUTON』でデビュー。以後『イトウの恋』『ツアー1989』『冠・婚・葬・祭』など次々に作品を発表し、2010年、『小さいおうち』で直木賞受賞。14年に『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞、15年に『かたづの!』で河合隼雄物語賞と柴田錬三郎賞、及び『長いお別れ』で中央公論文芸賞を、20年に『夢見る帝都図書館』で紫式部文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
545
マヤが「きみ」に語る一人称体のスタイルをとる。この語りの巧みさが、なによりも本書の成功の最大の要因だろう。では「きみ」とは一体誰なのか。もっと早くに気が付いた人もいただろうが、私が確信したのは間もなく全体の半ばといったあたり。テーマは日本の入管問題となかなかに切実かつ深刻なのだが、作品全体を貫流する抒情がそうした殺伐とした対応を(作品として)救う。それにしても、日本の入管のあり方は外国人に対してあまりにも冷酷で理不尽である。予断と偏見に満ちているといってもいい。恥ずかしながら、私はここまでのものだという⇒2025/02/09
starbro
518
中島 京子は、新作中心に読んでいる作家です。著者初の新聞連載小説、タイトルと表紙から、ほのぼのとした猫小説😸かと思いきや、クマさん小説🐻、入管制度在留許可家族物語の感動作でした。外国人の手をかりなければならない現状の日本ですが、現行の制度は外国人にかなり厳しい状況のようです。 https://www.chuko.co.jp/tanko/2021/08/005455.html2021/09/03
旅するランナー
362
スリランカ人とのカルチャーギャップが愉快な、ほのぼの系愛情物語。と思っていたら、理不尽な入管・在留資格に苦しみながら、退去強制令取消し裁判を戦い抜く、家族の物語になっていく。入管局の厳しい裁量に翻弄される人たちの苦しみに切なさを感じ、主人公たちの真摯で深い愛情に感動します。日本が抱える一つの問題をしっかり描いた、素晴らしい小説です。2021/10/02
mondo
358
久しぶりに小説を読んで泣きました。特にラストシーン。読むきっかけは、名古屋入管で死亡したスリランカ人のウィシュマさんの事件を知ってから。日本では外国人の人権が殆ど無視されているように感じる。小説に登場するクルド人の少年のことは読後も気がかりで仕方がない。今上映中の「東京クルド」も観に行きたいと思った。多くの人に読んでもらいたい一冊。 2021/09/26
けんとまん1007
316
改めて、人という存在を考える。同じ人は、二人としていない。そこにあるのは、差ではなく違いだけの筈。と、言いながら、自分自身もどうなのだろうか・・と考える。その場次第で、かなり変わるのだろうと思う。そこが、この国の見直すべき文化なのではないだろうか。2022/01/30