出版社内容情報
一九四三年のクルスク会戦は、空前絶後の数の戦車を集めた独ソ両軍が正面から激突した戦いである。この戦いに敗北したドイツは、以後、ソ連軍に戦略的主導権を奪われ、ずるずると敗戦に至ったのである。しかしながら、戦後の独ソ両国の政治的思惑から、クルスク戦の歴史イメージは、著しく歪曲された。タイガー戦車やパンサー戦車に期待をかけたヒトラーの作戦発動延期により、ドイツは勝機を失っていった、クルスク戦のクライマックスであるプロホロフカ戦車戦で、ソ連のT-34は、正面からタイガー戦車と渡り合い、競り勝った……。
ところが、こうしたクルスク戦像は、冷戦終結後の政治情勢と重要文書の機密解除により、根底からくつがえされてしまった。従来、われわれが知らされていたクルスク戦の流れは、虚像でしかなかったことがあきらかにされたのである。
本書の著者ローマン・テッペルは、そうした営為の先頭に立つ、新進気鋭の研究者である。
内容説明
根底からくつがえされた定説。従来人口に膾炙していたクルスク戦像は、いわば「冷戦テーゼ」であり、事実ではない。独ソいずれにおいても、虚構の戦史がまかり通るというようなことがなぜ起こったのか。ドイツ軍事史研究の最先端を走るローマン・テッペルが解明したクルスク戦の実相。
目次
1 はじめに―「クルスク会戦」か、それとも「オリョール=ビェルゴロド間の会戦」か?
2 行動の法則―一九四三年夏季会戦の準備
3 「炎の弧」―一九四三年夏のクルスク、オリョール、ハリコフをめぐる諸戦闘
4 消耗戦―一九四三年の東部戦線における夏季戦闘の結果
5 偽られた勝利―記憶をめぐる闘争
著者等紹介
テッペル,ローマン[テッペル,ローマン] [T¨oppel,Roman]
1976年、旧東独バウツェン生まれ。ドレスデン工科大学に提出した修士論文以来、クルスク戦の研究に取り組み、まとめ上げた。『クルスクの戦い1943』は、出版されるや、その先端的な内容により、高い評価を獲得し、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語に翻訳された。イギリスの『ガーディアン』の編者の一人でもある
大木毅[オオキタケシ]
1961年、東京生まれ。現代史家。立教大学大学院博士後期課程単位取得退学。DAAD(ドイツ学術交流会)奨学生としてボン大学に留学。千葉大学その他の非常勤講師、防衛省防衛研究所講師、国立昭和館運営専門委員等を経て、著述業。『独ソ戦』(岩波新書)で新書大賞2020大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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