出版社内容情報
キノベス!2021 第1位『滅びの前のシャングリラ』凪良ゆうさん受賞スピーチ
内容説明
「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香。そして―荒廃していく世界の中で、四人は生きる意味を、いまわのきわまでに見つけられるのか。圧巻のラストに息を呑む。滅び行く運命の中で、幸せについて問う傑作。
著者等紹介
凪良ゆう[ナギラユウ]
滋賀県生まれ。2006年、「小説花丸」に「恋するエゴイスト」が掲載されデビュー。以降、各社でBL作品を刊行。17年、非BL作品である『神さまのビオトープ』を刊行し高い支持を得る。20年『流浪の月』が本屋大賞グランプリを獲得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
禍腐渦狂紳士タッキー【主にBL作品感想係】
1022
【神さまが創った世界では叶わなかった夢が、神さまが壊そうとしている世界で叶ってしまった。ねえ神さま、あんたは本当に矛盾の塊だな】一ヶ月後に小惑星が衝突し地球は滅びる。不可避の終わりを宣告された世界で、友樹・信士・静香・Locoの人生を上手く生きられなかった4人の足掻きと最期に見つかる青い鳥が感動的でした。登場人物の視点が変わるけれど物語が繋がっているのが面白いし、それぞれが抱く幸せの形が尊い。もし、現実の世界でも同じことが起きたら自分だったらどうするのか、想像しながら読むのも楽しみのひとつですね。2020/10/09
さてさて
1004
私たちはどんな事態が発生しても一方で頭の片隅には”その先に続く未来”を前提にその時の行動を決めている側面があると思います。しかし、この作品の大前提である”その先に続かない”立場に置かれた場合には、私たちはどのような行動を取るのでしょうか?壮絶な設定を背景に丁寧に紡がれる人の心の機微を見るこの作品。リアルに展開されるカウントダウンの日々を生きる人達の姿にすっかり心を囚われたこの作品。そして読後もしばらくあれやこれやと考えてしまうこの作品。凪良さんからドスンと重いものを最後に手渡されたように感じた絶品でした。2021/03/13
パトラッシュ
942
地球最後の日が来ると知れば何をするか。その日まで時間があれば『三体』のように生きる途を求めてあがくだろうが、わずか1か月しかなければ「どうせ死ぬのだから」と人は確実に壊れる。立場も教養も金銭も無意味になった自称文明人が略奪や暴力や殺人に明け暮れる中で、それまで普通の生活を送れなかった4人が殺人被害者の家に住み着いて時間限定の幸福な家族となる逆説。滅亡が目前だからこそ虚飾をはぎ取られた人びとが、地獄へ行くかシャングリラを選ぶかは僅かな差だ。好きな歌を聴き歌いながら最後の瞬間に希望を感じるラストは輝いている。2022/01/28
starbro
932
凪良 ゆう、3作目です。本屋大賞受賞後第一作は、一か月後に小惑星が衝突する単純パニック・SF小説かと思いきや、読み応えのある人類が生きることを問う家族の物語でした。 https://www.chuko.co.jp/special/shangrila/2020/11/18
ウッディ
903
小惑星の衝突により地球が滅亡し、命の期限が等しくあと一ヶ月と区切られた人々。イジメを受けていた高校生、養女として両親からの愛情に疑問を持つ女子高生、意に染まぬ殺人を犯したチンピラ、絶望していた世界が滅亡することを知り、勇気を出して踏み出したことで、彼らは以前の自分よりも今の自分を好きになる。世界の滅亡を知った時、人はどのように行動するか、勇気とは、後悔とは、そして家族とはを考えさせられる物語でした。友樹の雪絵への思いと優しさ、夫として父として家族を守ることができた喜び、そして母の潔さ、どれも感動しました。2021/03/04