出版社内容情報
妻が〈殺人者〉と知ったとき、
穏やかな日常がサスペンスに変わる
東京での暮らしをたたみ、「島」に移住した
70代の夫婦と、友人の小説家
それぞれの秘密、それぞれの疑惑が
あやしく溶け合うなかで
〈真実〉が徐々に姿を見せていく
人は、自分にだって嘘をつく――
読み終えたときに立ち上がる、思いがけない光景に息を?む
傑作長編小説
内容説明
離島へ移住を決めた芳朗と蕗子、そして夫妻の友人・野呂。人生の終盤で実現した共同生活の滑り出しは順調に見えるが、三人はそれぞれ不穏な秘密を抱えており…。おいそれとは帰れないこの場所で、彼らは何を目にし、何を知るのか―。
著者等紹介
井上荒野[イノウエアレノ]
1961年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。89年「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞、2004年『潤一』で島清恋愛文学賞、08年『切羽へ』で直木賞、11年『そこへ行くな』で中央公論文芸賞、16年『赤へ』で柴田錬三郎賞、18年『その話は今日はやめておきましょう』で織田作之助賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
machi☺︎︎゛
158
老後を離島で暮らそうとやってきた碇谷夫妻と元小説家の男。そこで家政婦親子を交えた5人での生活が始まる。それぞれの視点で想像と現実を交えながら話が進む。みんなが何かしらの秘密を抱えているからかずっと付き纏う不穏な空気。読み進めるうちに謎だった事も徐々に明らかになり、最後は人の強さと愛情を感じる事ができた。2020/08/24
モルク
125
70代の骨董店を営みかつてはテレビにも出ていた碇谷夫婦と、小説家の野呂は東京から島に移住し一軒の家で共同生活を始める。かつて夫の愛人を妻が殺し、その愛人の娘が住み込みの家政婦となったみゆかではないかという疑問を夫はもつ。不穏な空気が漂い始める。3人それぞれの視点の語りから進んでいくが、次第に話にズレを感じてくる。これはたぶん…。経験からちらりと頭をよぎる。海岸での双子のこども、青いベビーカーの存在が効果的。そしてこのあと彼らはどうするのか。このまま身を任せ流れていくのか。2020/10/29
sayuri
125
「美しい手、だがこれは殺人者の手だ」冒頭の一言でサスペンスフルな内容を想像する。碇谷芳郎、碇谷蕗子、野呂晴夫、物語は3人の視点で交互に語られ進行して行く。離島へ移住を決めた芳朗と蕗子、夫妻の友人・野呂。人生の終盤を迎えた70代の3人の共同生活は表面上は仲睦まじく見えるがそれぞれに心に秘めた思いがある。文中から醸し出される重苦しい空気感と、この独特な設定で更に不穏さが増大し、途中から感じる違和感は終盤に向けてどんどん強くなっていった。読み終えて、この物語はミステリーではなく人間ドラマだった事に気付かされる。2020/03/28
なゆ
114
荒野さんだなあ。得体のしれない不穏さに引っ張られて、時にシュールな夢のようになり、足もとがグラグラするような読み心地。でも荒野さんしか書き得ない夫婦の形がある。老後を離島で過ごそうと、移住してきた碇谷夫妻と友人の野呂晴夫。70代の3人と、住み込み家政婦みゆか、とその子ども小1宙太の共同生活。「この家には秘密が多すぎるんです。もう誰が誰に何を隠しているのかわからなくなってしまった。」どんよりしたストーリーの中、原色の小道具が印象的に現れる。それにしても、最後まで読むと妻の蕗子の淡々とした強さに恐れ入る。2020/07/30
ででんでん
99
荒野さんならではの、不穏さを漂わせながら始まった物語。違和感を感じながらも、飽きることなく最後まで運ばれ、そうだったのかと腑に落ちると、また違う切なさとあたたかさの余韻にくるまれる。人生を共に送ろうとスタートしても、歳月を経て、それぞれが同じところに着地できるとは限らない。そのことは、忘れてしまいがちだが、生きるということの現実なんだな。2020/05/18
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