出版社内容情報
深沢七郎との二度の対談、金井久美子、美恵子姉妹とのおしゃべり、そして、吉行淳之介と「好色五人女」をめぐる話。武田百合子が残した数少ない対談に加え、NHKラジオで放送された岸田今日子との『富士日記』をめぐる対話も、初収録する。
内容説明
エッセイとは異なる新たな一面がかいま見られる。単行本未収録の一篇を加えた初の対談集。
目次
武田泰淳の存在―深沢七郎×武田百合子(入院そして肝臓ガンによる死;口述筆記について ほか)
メリイ・ウイドウのお話―金井久美子×金井美恵子×武田百合子
女と男のまな板ショー―深沢七郎×武田百合子(谷崎賞は御仏の慈悲;『みちのくの人形たち』 ほか)
『好色五人女』のおもしろさ―吉行淳之介×武田百合子(生きるか死ぬか;一・一人の男関係 ほか)
『富士日記』をめぐって―聞き手 岸田今日子
著者等紹介
武田百合子[タケダユリコ]
1925(大正14)年、神奈川県横浜市生まれ。旧制高女卒業。51(昭和26)年、作家の武田泰淳と結婚。取材旅行の運転や口述筆記など、夫の仕事を助けた。77(昭和52)年、夫の没後に発表した『富士日記』により、田村俊子賞を、79年、『犬が星見た―ロシア旅行』で、読売文学賞を受賞。93(平成5)年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
86
令和の時代に入って、武田百合子の新刊を読むことはないと思っていたが、これは雑誌掲載から再録した対談集。『あの頃』以来、懐かしい女性に再会したような気がするのは、この著者の愛読者なら誰しも思うことだろう。ゲストはすでに鬼籍にはいった深沢七郎、吉行淳之介、岸田今日子、それにいまも健在の金井久美子・美恵子姉妹。5つの対談からは、『富士日記』を読んでいるかのようないくつかの情景が想起される。「山荘の壁に掛かっている麦わら帽子、暖炉のそばに置いてある長靴、夜寝ていると、天井の太い梁に腰掛けて足をぶらぶらさせているよ2020/01/27
chanvesa
48
富士山荘に向かう道中、道路脇に倒れている男を見て車を停めて、様子を聞こうとする百合子に、泰淳が「そんなことをするおまえがいやだということも入っているし、そんなことはいやだということも入っていたと思う。理由は言わないで、黙って暗い目つき(46~47頁)」で百合子を見た、この箇所が印象的。深沢七郎の「人を助けるとか、お経をあげてご利益があるとか、そんなことにもうなんの意味もないということを、武田先生はよくご存じ(48頁)」ということも納得。2020/03/22
もりくに
47
武田百合子さん一家が好きだ。夫の泰淳さんの中国文学への深い造詣に裏打ちされた重厚な「文学」は、若いころ愛読した。娘の花さんの「眠ったような」街を撮ったモノクロの写真は、とても素敵だ。冒頭の写真はもちろん彼女。ご機嫌な百合子さんと、足元に纏わる愛猫。写真に添えられる文章も、さすが二人の愛娘。百合子さんにたどり着くまで言葉を要したが、夫に度々促されて、いやいや書き始めたのが、あの「富士日記」。スゴイ!この本は、百合子さんと気の置けない人達との対談。深沢七郎さんに、金井美恵子姉妹、そして吉行淳之介さん。 (続)2020/02/13
ぞしま
23
口述筆記の描写が興味深い。 金井姉妹との鼎談がよかった。怖いとも言えるかしら。 吉行淳之介との男と女な感じの対談は、時代もあるのか、少しどきどきする。 合間に(亡くなってしまった夫)泰淳の話が差し込まれてくるが、妙な既視感がある。この話法、語り口はよく知っているような気がする。法事で祖母と叔母と母が話すのをきいているような……。 百合子さんはしゃべる、泰淳は黙り、書く、というイメージは百合子さんが意図的に作ったものなのかな。そんな気も少しだけする。2020/03/17
更夜
18
武田泰淳さんの奥さん、百合子さんは小説家ではなく『富士日記』や紀行文『犬が星見た』で有名。だからこの2冊を読んでいないとちょっとわからない部分があります。深沢七郎、金井美恵子、久美子姉妹との鼎談、吉行淳之介、岸田今日子と対談していますが、皆さん、時代もあるだろうけれど話し言葉がきれい。ら抜き言葉もないし、特に最後の岸田今日子さんの敬語、丁寧語の美しさ、吉行淳之介さんの優しい口調が素敵。女三人でかしましい様子がほほえましい鼎談、おおらかな深沢七郎さん。百合子さんは本当に美人なのだと思う。2021/01/30