出版社内容情報
壮大な歴史小説群を遺した著者が、『背教者ユリアヌス』などの自作を通じ、歴史を物語ることへの思いを綴ったエッセイ集。豊饒な小説世界をより深く味わうために。【没後二十年記念出版】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
めぐみこ
3
辻邦生流“物語の作り方”。安土往還記・背教者ユリヌアス・春の戴冠・天草の雅歌・銀杏散りやまず・西行花伝…などについてが中心。 P55 “人々は大きな朝顔棚に咲く数百の朝顔の花のようなものなのだ。(略)それはわずか一日の生命なのに、すべての花は自らの宿命のままに咲き、その宿命を思いのたけ生きている。”2019/09/13
角
1
辻邦生没後20周年刊行物第2弾。著者の歴史小説関連の解題、関連文章、講演をまとめたもの。読者は通常、著者の悪戦苦闘の成果物としての物語のみを味わっている。本書に書かれているのは、著者が着想(イデー)を成果物に仕上げていくための、求道者にも似た思考と冒険の過程。著者がどのようにしてそれぞれの物語を組み立て、紡いでいったのかを知ることで、物語もより重層的に味わえるような気がする。読み終えた今、『安土往還記』から順を追って読み返したい欲求に駆られている。2019/08/04