出版社内容情報
〈懐かしい未来〉を舞台に「眠り姫」大捜索が始まる
――吉田篤弘が挑む、かつてない群像劇!
2095年、東京は四半世紀前に建てられた〈壁〉で東西に分断されていた。曖昧な不安に包まれた街は不眠の都と化し、睡眠ビジネスが隆盛を誇っている。
そんな中、眠り薬ならぬ覚醒タブレットの開発を命じられた青年・シュウは、謎の美女に出会い――。
伊坂幸太郎、朝井リョウをはじめとする人気8作家による
競作企画【螺旋プロジェクト】の1冊としても話題!
内容説明
二〇九五年、壁によって分断された東京は“不眠の都”と呼ばれていた。目覚めるのははたして天使か怪物か 眠り姫を目覚めさせるため、八人目の王子は壁をこえる
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
355
本書は9人の作家たちが書き継ぐ形で競作する「螺旋プロジェクト」の最終巻、未来篇を担っている。私はそのほとんどが未読なのだが、プロローグとエピローグにある「海と山の伝承」が、これら壮大な物語を繋ぐコードなのだろう。ここでは、タイトルも対立する2元項からなり、作品全体の構造もまたそうである。その地上的な表れが壁によって隔てられた東西の分断であり、ニモとドリーム8のそれである。また、身体的には大きな耳の一族と、青い眼の一族として表象される。これらの2言論的対立は、この最終巻でアウフヘーベンされたのだろうが⇒2025/03/04
starbro
284
螺旋プロジェクト、全八巻、3,000頁弱完読しました。「螺旋」プロジェクト完読倶楽部コンプリートです。吉田 篤弘は、初読です。オーラスは、近未来の眠り姫の物語、エンディングとしては良かったと思いますが、海と山の対立は、どうなったのでしょうか?『ローマの休日』のフィルムが失われるような未来は厭だ!2019/08/16
モルク
124
螺旋プロジェクトシリーズの未来編。東京は壁で分断され、不眠の都となっている。眠りを導くためにおもしろくない本が重宝され、眠りを妨げるおもしろい本は排除される。本好きには悪夢の未来、読メはどうなる?そして海族、山族の対立はどうなった?まあめでたし、めでたしというところ。遊び心溢れる作品だとは思うが、さらっと読んでしまったので、いつかはゆっくり再読しよう。2019/09/30
優希
96
連作短編のようでありながら、静かな物語に引き込まれていきました。眠りと童話をテーマにしており、おとぎ話のような結末という印象を受けます。未来の物語であること、眠りと不眠を結びつけているのが興味深いものでした。世界観は難しさをも感じさせますが、その不思議さが物語を彩ることで、御伽噺のような美しさがあると思います。 2020/01/10
あも
91
螺旋・未来編_発達しすぎた科学を抑制する〈レイドバック〉により文明が後退し、不眠に悩まされる老年期の東京。面白い本は睡眠の邪魔だと焚書される時代。著者の穏やかな筆致も一役買ってはいるが、長い長い螺旋渦巻く争いに人類はもう飽き果てたかのように見える。件の壁も緩い分断のみを残して遺物と化した日本で。ゴールデンスランバー、イソベリ…螺旋を彩るキーワードを纏い、彼は彼女の元へと走る。いつの世も争いに打ち克つのは誰かが誰かを求める想い。おおる…おおる…歴史の節目節目によぎった赤子の声が響き渡る。新時代を寿ぐ産声が。2019/09/12