出版社内容情報
没後二十年を記念して辻邦生の魅力を語り尽くす。全五回にわたる学習院大学史料館での展示図録、資料に松浦寿輝、佐藤賢一、保苅瑞穂、塩野七生ほかによる書きおろしエッセイ、未刊行講演、対談等を加え再編集する。
写真、単行本未収録作を多数収録する愛読者必携の一冊。【没後二十年記念出版】
目次
遠い園生―文学を志した旧制松本高校時代からパリ留学まで(単行本未収録 旧制高等学校時代の習作―日記「園生」より(翻刻 冨田ゆり)
野崎守英―松原湖近くの山村で出会った三十歳の辻邦生さんのこと ほか)
著作に寄せて1―『廻廊にて』から『嵯峨野明月記』まで(廻廊にて 中条省平―虚無と死をこえて幸福な脱我へ;夏の砦 田邊園子―『夏の砦』の前後 ほか)
明澄な眼ざし―回想の中の辻邦生(宇野千代―辻さんの印象;水村美苗―想像力の優位 ほか)
著作に寄せて2―『背教者ユリアヌス』から『浮舟』(未刊)まで(背教者ユリアヌス 高橋裕子―辻邦生・佐保子夫妻と『背教者ユリアヌス』;背教者ユリアヌス 蜂谷緑―誰からも愛された人、辻邦生さん ほか)
世紀末への招待―華麗な頽廃の伝統 対談 塩野七生×辻邦生
年譜・著作リスト
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきあかね
25
1999年に辻邦生が亡くなって、今年で早20年になる。没後20年を記念して、辻が教鞭を執っていた学習院大学が編集した本書は、作家や評論家、編集者達から寄せられた、辻邦生の作品や辻自身にまつわるエッセイからなる。長編小説はともかく、芳醇な魅力を湛えた短編や随筆の多くが絶版になっている現状を寂しく思っていたので、多くの人たちの辻作品への愛情が感じられ、頁を繰る度に心が温もり、澄み渡っていく気がした。 世界や歴史が確かな指針を失いつつある現在、儚い人間の生を力強く永遠の領域へと誘う辻邦生作品の輝きが増している⇒2019/06/17
ソングライン
15
辻邦生の主要な著作、回廊にて、夏の砦、安土往還記、嵯峨野明月記、背教者ユリアヌス、春の戴冠、そして西行花伝の制作過程の詳しい解説、パリ留学時代から晩年に至る作家とその妻佐保子と親しかった人々の二人との思い出が載ります。背教者ユリアヌスを最初に読み、辻邦生のファンとなった私には、たまらない1冊でした。没後20年になりますが、辻家の歴史を描く「銀杏散りやまず」に登場する作家の甥、辻守昭氏は昨年暮れにお亡くなりになり、この夏、守昭氏が診療にあたっていた建物が平地となりました。2019/08/09
すかいふらわぁ
4
1999年、わたしは日経新聞に連載していた最後の「小説」、「のちの思いに」を毎回楽しみにしていた。辻邦生の死によって、未完となったが、それから、様々な作品を読み始めた。それから20年、友人の何気ないひと言で、この本を手にした。まだ読んでいない大作がある。この本を読んで、それらの作品を読みたくてたまらない。「背教者ユリアヌス」「春の戴冠」いきなり読むのは難しいから、少しずつ思い出して読んでいこう。辻邦生の世界の素晴らしさを思い出した。そうわたしに思わせるのに充分な本である。2019/09/18
角
4
辻邦生が亡くなってもう20年になる。毎年夏の学習院大学での展示を楽しみにしていた者にとって、このように冊子の内容がまとめられたのは本当に嬉しい。著者と関連した人たちのエッセイ(書き下ろしも!)だけでなく、アルバム、資料もバランス良く編集されている。著者の人となりと作品とを追っていける構成で、見ているだけで楽しい。野暮を承知で2点ほど。1つ、編集経緯上仕方ないかもしれないが、短編に言及したエッセイが欲しかった。2つ、冊子掲載の文章に「本展」といった表記が残っているのは注釈を入れて欲しかった。2019/07/07
lovejoy
0
★★★2019/07/04