ファシスタたらんとした者

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ファシスタたらんとした者

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  • サイズ 46判/ページ数 389p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784120049866
  • NDC分類 304
  • Cコード C0095

出版社内容情報

「実際のイタリア・ファシスタにゴロツキと呼ばれて致し方ない手合がたくさん加わったこと、それを知りつつも、またムッソリーニの喋り方における大芝居ぶりに嫌悪を覚えたことが幾度あるにもかかわらず、著者は自分の気分の奥底にファシスモめいたものがうごめいているのをいつも自覚していたのである」 危機としての生を実践し、「戦後」の無惨と虚無に対峙し続けたファシスモが、己の人生の全域を剔出した最後の巨編。懐疑と省察、冒険への意志が導いた思想の堂奥とは。皇室論・信仰論を付す「自分が保守派に属することを世間に向けて公表する四十歳代の半ばに、『保守の幻像へ』という題名の本を出した。ここでの「ファシストたらんとした者」が抱いているのも、「幻像としてのファシスモ」にすぎぬことを、遅ればせに告白しておこう。もっというと、幻像としての伝統を胸裡に抱懐し、それの極致である死の具体的なやり方を危機に満ちた「今此処」という状況のなかで決断し、それを実践すれば他者に通じるはずだとの幻像を生きる、それがファシスタだということである。」 いま著者が混沌の時代に投げかけるのは、一匹のヒューモリスト(人性論者)がここにいた、という厳然の提示なのである。

内容説明

危機としての生を実践し戦後の無惨と虚無に対峙し続けたファシスタが己の人生の全域を剔出した最後の巨編。懐疑と省察、冒険への意志が導いた思想の堂奥とは。皇室論・信仰論を付す、長き人生と思想が紡ぎ出した最後のメッセージ。

目次

「敗北」を目の当たりにした少年の「鬱勃たる憂鬱」
社会に快楽で誘われ苦痛を与えられた少年は蛹のなかに入った
背信を受ける肌触りと背徳を為す手触り
愚かでも若ければ細い綱を知らぬ間に渡ってしまう
連合赤軍事件を契機に大衆批判に「起ち」、外国の地で保守擁護に「惑わなかった」
時代錯誤を承知の上での相対主義の峻拒
東大と喧嘩し、マスコミと政治に触れ、そして知らされた批評家の立場
自死への思い、雑誌の発刊そしてAUMとの擦れ違いに思い知らされた「状況」の際疾さ
大東亜戦争の戦跡をたずね、犠牲の死者たちとの「交話の歌」を妻と心身に迫る危機を察しつつ、心中でうたいつづけた
テロリストの味方と呼ばれるにつれ深まりゆくテロ(恐怖)への理解
『マニフェスト』の流行をみて世間の陥る愚味には底がないと知る
世界大戦の足音を聞きながらナチ・ファッショを夢想する
世界大戦の足音を聞きながらナチ・ファッショを夢想する(続)
「自分の死」としての「連れ合いの死」そして「死相の世界」のなかでの「エッセイイストの末期」
実存への省察、実践への冒険、近代への懐疑、保守への模索、それらをエッセイ(試論)で束ねるのがファシスモ

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

踊る猫

41
実を言うとぼくは齢48にしていまだに保守思想を知らないトーシロなのだけれど(恥ずかしい)、この本を読み西部邁の思想のエッセンスが「ある程度」掴めたように思う。もちろん大問題を歯に衣着せぬ筆致で論じた批評家でもあったわけだが、同時に彼にとって妻との生活や友との交友といった平々凡々な日々の中に「非凡」を見い出せる稀有な知性を持ち得た人でもあったということなのだろう、と。そんな稀有な知性の働きは、堕落(ハイデガー的に言えば「頽落」?)を許さずしたがって自死/自決の美学を貫くしかなかった。この本は上質なブルースだ2023/11/23

踊る猫

35
読み返し、あらためて西部邁という人が持つ鋭利な知性と感受性に脱帽する。ぼくの「感想」「私見」をそのまま書きなぐると、これは余裕で漱石・芥川といった知識人に比肩するものですらあると思う。現実の西部には(数は少なかったかもしれないが)熱狂的な支持者・理解者がいたとぼくには映るが、ここに現れる西部の姿からはそうした知識人が生きざるをえなかった大衆社会との乖離が見て取れ、それに苦しみつつ迎合することをも自らに許せず、したがって孤独を貫くしかないという自己認識が感じ取れる。読むほどに、その孤独なたたずまいに絶句する2024/05/15

やじ

28
イタリア語でファシスタ、英語でファシスト。その原意は「結束者」とか「団結者」。混沌しか待ち構えていない未来に対峙する為に、日本人で価値を共有し、他者と結束して前進するしかないのだと、生涯通じ思いを持続させ、他者と繋がる事をひそかに願望して来たが、願いは叶わなかった。何冊もの本は話題にすらならなかった。日本人に絶望されての自裁死か?と推測していたが、その通りだ。生きておられる間に先生を真に理解できなかった事を申し訳なく思った。この国は大変な方をぞんざいに扱い、そして失ってしまったのだと愕然とする。2018/02/03

BLACK無糖好き

16
『正論』で連載が始まった当初に読んでいたが途中でサボっていたので、本書の刊行は大変有り難い。著者のこれまでの人生と思想の遍歴過程が濃密に語られ、更には如何に生を終わらせるかについての著者自身の考えも披瀝している。反米保守こそが真の保守だと思わせる人物。奥深い歴史観や思想形成、体制に媚びらず大衆に迎合しない著者のスタンスが見て取れる。又、それにも増して本書の凄みは、著者が体の痛みを抱えながら、己の死にどう向き合うかを「死相の世界」に深く入り込んで論じている点に見る事ができる。2017/09/13

ナン

11
久しぶりに西部邁氏の文章を読み、普段使わない脳の部分を使った感じで面白かった。西部氏の評論は学生時代に読んでいたが、そこに至るまでの前半生や思想遍歴を初めて知りこれまでの理解を深めることができた。とはいえ、消化しきれない部分も多々あったので、時間をおいて再読、また特に「死」について思索している別の著作も読んでみたい。2022/02/06

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