出版社内容情報
「実際のイタリア・ファシスタにゴロツキと呼ばれて致し方ない手合がたくさん加わったこと、それを知りつつも、またムッソリーニの喋り方における大芝居ぶりに嫌悪を覚えたことが幾度あるにもかかわらず、著者は自分の気分の奥底にファシスモめいたものがうごめいているのをいつも自覚していたのである」 危機としての生を実践し、「戦後」の無惨と虚無に対峙し続けたファシスモが、己の人生の全域を剔出した最後の巨編。懐疑と省察、冒険への意志が導いた思想の堂奥とは。皇室論・信仰論を付す「自分が保守派に属することを世間に向けて公表する四十歳代の半ばに、『保守の幻像へ』という題名の本を出した。ここでの「ファシストたらんとした者」が抱いているのも、「幻像としてのファシスモ」にすぎぬことを、遅ればせに告白しておこう。もっというと、幻像としての伝統を胸裡に抱懐し、それの極致である死の具体的なやり方を危機に満ちた「今此処」という状況のなかで決断し、それを実践すれば他者に通じるはずだとの幻像を生きる、それがファシスタだということである。」 いま著者が混沌の時代に投げかけるのは、一匹のヒューモリスト(人性論者)がここにいた、という厳然の提示なのである。
内容説明
危機としての生を実践し戦後の無惨と虚無に対峙し続けたファシスタが己の人生の全域を剔出した最後の巨編。懐疑と省察、冒険への意志が導いた思想の堂奥とは。皇室論・信仰論を付す、長き人生と思想が紡ぎ出した最後のメッセージ。
目次
「敗北」を目の当たりにした少年の「鬱勃たる憂鬱」
社会に快楽で誘われ苦痛を与えられた少年は蛹のなかに入った
背信を受ける肌触りと背徳を為す手触り
愚かでも若ければ細い綱を知らぬ間に渡ってしまう
連合赤軍事件を契機に大衆批判に「起ち」、外国の地で保守擁護に「惑わなかった」
時代錯誤を承知の上での相対主義の峻拒
東大と喧嘩し、マスコミと政治に触れ、そして知らされた批評家の立場
自死への思い、雑誌の発刊そしてAUMとの擦れ違いに思い知らされた「状況」の際疾さ
大東亜戦争の戦跡をたずね、犠牲の死者たちとの「交話の歌」を妻と心身に迫る危機を察しつつ、心中でうたいつづけた
テロリストの味方と呼ばれるにつれ深まりゆくテロ(恐怖)への理解
『マニフェスト』の流行をみて世間の陥る愚味には底がないと知る
世界大戦の足音を聞きながらナチ・ファッショを夢想する
世界大戦の足音を聞きながらナチ・ファッショを夢想する(続)
「自分の死」としての「連れ合いの死」そして「死相の世界」のなかでの「エッセイイストの末期」
実存への省察、実践への冒険、近代への懐疑、保守への模索、それらをエッセイ(試論)で束ねるのがファシスモ
感想・レビュー
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踊る猫
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