内容説明
五輪の優勝、WBCの準優勝により、韓国の野球は国民的スポーツとなった。いまその起源や日本経由の用語見直しなど、歴史の解明が喧しい。日本は朝鮮野球にどれだけ関与したのか―。植民地時代の朝鮮野球は、朝鮮人と支配者日本人双方から重視されていた。日本人との試合は大いに盛り上がり、朝鮮ナショナリズムに火をつける。当局は、中等学校の甲子園出場に道を開き、都市対抗野球を後押しし優勝に導くなど、融和政策に“活用”する。本書は一九世紀末から「解放」される一九四五年まで、複雑な道程を辿った朝鮮野球について、二つの“民族”を通して描くものである。
目次
序章 変化する野球用語
第1章 ベースボールの伝来と野球の普及―韓国併合前
第2章 暗黒時代―武断政治下の野球界
第3章 「民族の発展は壮健な身体から」―文化政治期の朝鮮野球界1
第4章 帝国日本の野球イベント―文化政治期の朝鮮野球界2
第5章 戦時期朝鮮の野球界
終章 植民地朝鮮の野球とは何だったのか
著者等紹介
小野容照[オノヤステル]
1982年横浜市生まれ。2005年学習院大学経済学部卒業。08年(韓国)高麗大学校大学院韓国史学科修士課程修了。12年京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員を経て、京都大学人文科学研究所助教。専門は朝鮮近代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おかむら
34
日本の植民地だった時代の朝鮮を「野球史」という着眼点から考察。伝来普及発展衰退の歴史。ユニークかつ新しい。野球用語、統治政策、スポーツとナショナリズム、部活と戦争、帝国と甲子園、都市対抗野球等々、固めの学術書ですが興味深い内容で面白かった! 著者は若手の学者さんのようですが、日韓の一次資料をきちんと調べてて研究熱心さが好ましいわ。2017/05/31
みなみ
9
著者が最初期のWBCで韓国選手がナショナリズムをむき出しにしたのを目の当たりにしたことが、この本を書くきっかけになったらしい。韓国における野球の受容と日本の影響力を日本の植民地支配とあわせて記していく。朝鮮半島での野球の普及に日本の新聞社(朝日新聞や毎日新聞)が果たした役割や、学生野球の大会や社会人野球など。野球はお金がかかるので戦前からすでに朝鮮半島ではサッカーのほうが盛んだったそうだ。2024/08/25
kawasaki
1
米国のベースボールを自らの社会に取り込む過程において、日本は「日本精神」を強調した独特の「日本野球」を生み出した。そこには西洋近代への憧憬と、民族性の主張がある。では、朝鮮ではどうか。民族主義者と植民地当局、マスコミ、プレイヤー、観客など、さまざまな思惑・感情の交錯を硬軟さまざまな史料から描き出す。このご時世、情報は「わかりやすさ」の名のもと往々にして重要なことがそぎ落とされ消費されるのであるが、植民地の「わかりにくさ」「複雑さ」に丁寧に向き合った歴史研究の面白さを知る上でもお勧めしたい一冊。2017/02/20
t0t0165
0
植民地下朝鮮における詳細な野球史。朝鮮における野球の普及は帝国日本と深く結びついていることの証左。2017/02/04
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